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「出土した岐阜の逸品」No.6動物と弓矢が描かれた縄文土器を紹介
【逸品No.6】動物と弓矢が描かれた縄文土器
逸品情報
全体写真(線刻絵画土器)
写真(動物文)
写真(弓矢文)
実測図(動物文)
実測図(弓矢文)
概要
縄文土器(深鉢)口径:32.8cm器高:40.8cm以上
一見すると、単純な縄文時代後期の深鉢(ふかばち)ですが、胴部の2箇所に、細く鋭い線で動物文と弓矢文が描かれています。左斜め上に向かって引かれた線を枝と見ると、動物文は長い尾をもつ小型の樹上動物を描いたものと考えられます。弓矢文は2通りの解釈ができ、動物を狙って矢を構える様子(解釈1)、あるいは罠猟(わなりょう)の仕掛け弓を地面に立てかけられた様子(解釈2)を描いたのかもしれません。縄文時代の線刻絵画土器のうち描かれた内容がわかる例は全国的にも少なく、また動物文と弓矢文の組み合わせが東北地方を中心に分布する狩猟文土器(しゅりょうもんどき)と類似している点でも注目される資料です。
出土遺跡
塚奥山遺跡(揖斐郡揖斐川町塚)
揖斐川とその支流が合流する河岸段丘に立地し、縄文時代中期から後期を中心に営まれた美濃地域を代表する遺跡です。縄文時代中期では、中央に墓跡と考えられる土坑、その外側に柱穴又は貯蔵穴と考えられる穴、さらにその外側に竪穴建物(たてあなたてもの)と掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)が環状に見つかりました。このような集落の様子は「環状集落」と呼ばれ、東日本では多く見つかっていますが、西日本ではほとんど見つかっていません。また、縄文時代後期では、土坑の上に石を並べた配石遺構(はいせきいこう)、竪穴建物(たてあなたてもの)、土坑なども見つかりました。出土遺物には、三角とう形土製品(さんかくとうがたどせいひん)、ヒスイ製磨製石斧(ませいせきふ)、骨角器(こっかくき)、土偶(どぐう)などの西濃地域では珍しい遺物や、赤色顔料が付着する土器・石器も多く見つかり、この遺跡は地域の中で拠点となる集落跡であったと考えられます。
出土状況
この線刻絵画土器は、竪穴建物が埋まった土の上部で破片が重なるように出土しました。土器片の下で土坑は確認されませんでしたが、出土状況からこれらの土器片は人為的に廃棄された可能性があります。なお、土器片を復元すると底部付近は大きく失われていて、意図的に底部を抜いたのかもしれません。