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「出土した岐阜の逸品」No3荒尾南遺跡線刻絵画土器を紹介します
【逸品No.3】82本ものオールを持つ大型船が描かれた弥生土器
逸品情報
展開図
概要
弥生土器(壺)口径:12cm6mm器高:17cm
弥生時代後期の広口壺に、細く鋭い線で3艘の船が描かれています。上から見下ろした形で描かれている中央の大型船は、船首と船尾がイチョウの葉のような形をしており、両側に82本のオールと吹き流しのような旗が延びていますが、国内でこれほど大きな船の絵は知られていません。大型船の左右には、側面から見た形で帆掛け船が描かれており、旗がたなびく向きから、左に向かって進んでいると言えます。墓地から出土したことから、船が死者の魂を乗せてあの世に向かう葬送儀礼に用いられたのかもしれません。
出土遺跡
荒尾南遺跡(大垣市桧町)
揖斐川が形成した沖積低地に立地し、弥生時代中期から古墳時代前期を中心に営まれた美濃地域を代表する大規模遺跡です。弥生時代中期に掘られた遺跡を南北に縦断する幅約10メートルの大溝の周辺で周溝墓(しゅうこうぼ)228基が遺跡全域に広がって見つかりました。弥生時代後期になると墓は激減し、遺跡の北半を中心に古墳時代前期にかけて作られた竪穴建物(たてあなたてもの)559軒や掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)30棟が密集して見つかり、大溝の東側には水田が広がっていたこともわかりました。なお、大量の土器・石器・木製品のほか、東海地方最古級の倭鏡(わきょう)、巴形銅器(ともえがたどうき)、車輪石(しゃりんせき)などの特殊な遺物や、他地域との幅広い交流を示す遺物も出土しています。
出土状況
遺跡の南側に所在する方形周溝墓の溝から、細かく割れた状態で出土しました。溝から出土した破片と溝の外側から出土した破片とが接合したことから、土器の埋められた溝が埋まった後に削平されて土器片が散らばったと推測されます。