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収用手続の流れ
収用に至るには、事業認定の手続が必要ですが、収用委員会では事業認定は取り扱っていません。
このページでは収用委員会が取り扱う土地調書・物件調書の作成から裁決、あるいは和解に至るまでの手続きを説明します。
- 起業者が「事業認定」を得るまでの手続はこちらをご覧ください
- 起業者が事業認定を得た後は、次の図のとおりです。
下線のついた手続をクリックしていただくと説明を表示します。
起業者 |
収用委員会 |
土地所有者・関係人 |
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補償金の支払い |
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物件移転 |
事業認定(※事業認定に収用委員会は関わりません。)
国土交通大臣又は都道府県知事(事業認定庁)が、事業そのものについて、土地などの収用又は使用をする必要が認められる程度に公益性などがあるかどうかなどを判断し、収用又は使用することができる事業であると認定する処分です。事業認定手続はフロー図(※1)のとおり進められます。
事業認定を経ていない事業は、収用委員会に対する収用又は使用の裁決申請手続に進むことができません。
なお、事業が都市計画事業の場合は、都市計画事業の認可又は承認を受けていれば、事業認定を受けなくても、起業者は収用委員会に収用又は使用の裁決申請を行うことができます。
(※1)事業認定のフロー図はこちら[PDFファイル/66KB]
収用手続の一覧
起業者は、裁決申請に当たっては土地調書を、明渡裁決の申立てに当たっては物件調書を作成して添付しなければなりません。
土地調書、物件調書には、収用又は使用しようとする土地やその土地に所在する物件の状況や権利関係などが記載され、その図面が添付されます。
これらの調書には、起業者、土地所有者及び関係人の署名押印が必要ですが、土地所有者及び関係人は、調書の記載事項について異議があるときは、異議の内容を付記して署名することができます。
留意事項
土地所有者及び関係人は、調書に異議を付記した事項については、収用委員会においてその真否を争うことができますが、異議を付記しなかった事項については、記載の内容が真実でない旨を立証しない限り異議を述べることができなくなります。これは、調書の記載事項は真実に合致しているとの推定力が与えられるためです。
また、土地所有者及び関係人が、調書への署名、押印を拒否しても、市町村長等の立会い及び署名押印により土地調書、物件調書は作成することができます。
起業者は、収用委員会に対し、裁決申請書及び明渡裁決申立書を提出します。裁決申請は土地の所有権などを取得するため、明渡裁決申立ては建物などを移転して土地の明渡しを求めるためのものです。明渡裁決の申立ては、裁決申請と同時か裁決申請の後に行われます。
なお、裁決申請には「収用」「使用」「収用及び使用」の裁決申請がありますが、手続はほぼ同じです。
留意事項
[裁決申請の請求]
事業認定の告示後は、土地所有者及び関係人(抵当権者などは除く)は、いつでも起業者に対して、自己の権利に係る土地について裁決申請を行うことを請求することができます。
[補償金の支払請求]
事業認定の告示後であれば、土地所有者及び関係人(抵当権者などは除く)は、起業者に対して土地に関する補償金の支払を請求することができます。
ただし、裁決申請前に補償金の支払請求をしようとする場合は、裁決申請の請求とあわせてする必要があります。
[明渡裁決の申立て]
すでに裁決申請があり、明渡裁決の申立てがされていない場合、土地所有者及び関係人からも収用委員会に対して明渡裁決の申立てができます。
起業者から申請書等が提出されると、収用委員会はこれが法令に適合しているかどうかを審査し、適合していれば受理します。
裁決申請書又は明渡裁決申立書の受理後、収用委員会は、土地所有者及び関係人に裁決申請又は明渡裁決の申立てがあった旨を通知します。
また、受理された裁決申請書又は明渡裁決申立書の写しは、その土地の所在する市町村において、公告の上、2週間縦覧に供されます。
留意事項
土地所有者又は関係人の方々は、この期間内に裁決申請書又は明渡裁決申立書の内容を確認してください。
土地所有者及び関係人は、2週間の縦覧期間内に、収用又は使用する土地の範囲や権利関係、損失の補償、明渡しの期限などについて、収用委員会に意見書を提出することができます。
意見書の様式は特に定めがありませんが、作成の日付、提出者の住所氏名を記載の上、押印して提出してください。
留意事項
縦覧期間中に意見書を提出されない場合、損失の補償に関する事項以外の意見は、新たに述べることができなくなります。
また、意見書には事業の認定に対する不服など、収用委員会の審理と関係がないものを記載することはできません。
市町村での裁決申請書等の縦覧期間が経過すると、収用委員会は裁決手続の開始を決定してその旨を公告し、収用又は使用しようとする土地に裁決手続開始の登記を行います。
この登記時点で、相続人などを除き、土地の権利者等が固定されますので、この時点での権利者を当事者として後の手続が進められます。
縦覧期間の経過後、収用委員会は審理を開始します。
審理とは、収用委員会が、起業者、土地所有者及び関係人の意見を聴くために開催するもので、原則として公開で行われます。
起業者、土地所有者及び関係人宛てには、あらかじめ審理の期日及び場所を通知するとともに、県の公報に審理の開始を公告します。
審理は、会長又は審理の運営を委員会が委任した委員(指名委員)が指揮し、おおむね次のような事項について意見を聴取します。
[起業者に対し]
- 事業計画
- 裁決の申請に至る経緯
- 収用又は使用しようとする土地の区域
- 損失の補償
- 権利取得の時期及び明渡しの期限
[土地所有者及び関係人に対し]
- 土地調書、物件調書に記された事項の確認
- 起業者の申し立てた損失の補償、権利取得の時期、明渡しの期限に対する意見
- 提出された意見書の内容
争点の整理ができ、意見が出尽くした時点で審理は終了します。
また、代理人が出席する場合には、委任状が必要となります。
審理に出席される土地所有者及び関係人等や傍聴人が守るべき事項については、「岐阜県収用委員会の公正な審理の確保に関する規程」[PDFファイル/171KB]を確認してください。
留意事項
審理の開催を通知したにもかかわらず、審理に欠席されると、そのまま結審する場合があります。
9.意見書の提出、意見の陳述
審理において、起業者、土地所有者及び関係人は、次の事項について意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができます。
- 裁決申請書等の添付書類又は縦覧期間内に提出した意見書に記載された事項
- 損失の補償に関する事項(新たに意見書を提出したり、新たな意見を述べられます。)
- 収用委員会から提出を求められたり、説明を求められた事項
留意事項
審理においては、事業の認定に対する不服など、収用委員会の審理と関係がないことについては、意見書を提出し、又は意見を述べることができません。
また、縦覧期間中に意見書を提出されなかった場合は、損失の補償に関する事項以外の新たな意見書を提出し、又は新たな意見を述べることはできません。
収用委員会は、必要があると認めるときは、次のことを行います。
- 起業者、土地所有者及び関係人などに出頭を命じて審問し、又は意見書や資料の提出を命ずること。
- 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
- 現地について土地又は物件を調査すること。
岐阜県収用委員会では、概ね第1回目の審理の後、現地の調査を行っています。
審理が終結すると、収用委員会は、意見書や審理で主張されたことなどについて、必要な調査や検討(裁決会議)を行ったうえで、裁決をします。裁決は、裁決申請及び明渡裁決申立てに対する収用委員会の最終的な判断で、文書(裁決書)により行われます。裁決後、裁決書が起業者、土地所有者及び関係人に送付(送達)されます。
裁決には、裁決申請に対する応答としての権利取得裁決と明渡裁決申立てに対する応答としての明渡裁決があります。明渡裁決は、権利取得裁決と同時に、又は権利取得裁決のあった後に行われます。
裁決される主な事項は、次のとおりです。
[権利取得裁決]
- 収用又は使用する土地の区域(及び使用の場合は使用の方法及び期間)
- 土地又は土地に関する所有権以外の権利(賃借権、抵当権等)に対する損失の補償
- 権利取得の時期
権利取得裁決に基づいて、起業者は権利取得の時期までに補償金を支払うことにより、裁決書に記載されている収用する土地の所有権を取得し、賃借権、抵当権等の所有権以外の権利は消滅します。土地の使用の場合には、起業者は権利取得の時期に土地の使用権を取得し、当該土地に関するその他の権利は、使用の期間中、その行使の制限を受けます。
[明渡裁決]
- 土地の明渡しに伴う損失の補償(物件の移転料等)
- 明渡しの期限
明渡裁決に基づいて、起業者が明渡しの期限までに補償金を支払うと、土地所有者及び関係人は、明渡しの期限までに、その土地にある物件を移転して、起業者に土地を明け渡さなければなりません。
なお、次のような場合には、起業者の申請した収用又は使用を認めない「却下裁決」がなされます。
[却下裁決]
- 申請に係る事業が事業の認定を受けた事業と異なるとき。
- 申請に係る事業計画が、事業認定申請書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき。
- 申請が土地収用法の規定に違反するとき。
留意事項
起業者が、権利取得の時期までに権利取得裁決に係る補償金を、明渡し期限までに明渡裁決に係る補償金を、それぞれ土地所有者及び関係人に払い渡さなければ、裁決は失効します。
なお、土地所有者及び関係人が補償金の受領を拒否した場合や、起業者が受取人を確知できない場合などにおいては、起業者がその補償金を供託所(法務局)に供託することにより、補償金が支払われたのと同様の効果が生じます。
和解は、裁決申請後であっても、当事者間の話合いで円満に解決することが望ましいことから設けられている制度です。
和解は、次のとおり進められます。
- 和解には、裁決すべき事項について、起業者、土地所有者及び関係人の全員が合意することが必要です。
- なお、収用委員会は、審理の途中において、いつでも、起業者、土地所有者及び関係人に和解を勧告することができます。
- 全員の合意があったときは、それら全員から収用委員会に対し、和解調書の作成を申請します。
- 収用委員会は、和解の内容を審査した上で和解調書を作成します。
- 和解調書が作成されると、収用又は使用の裁決があったのと同様の効果が生じ、当事者は、和解の成立及び内容について争うことができなくなります。
留意事項
和解とは異なりますが、裁決前に当事者間で合意が成立し任意契約をした場合は、裁決申請を取り下げることもできます。