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不当労働行為審査命令の概要

最近の不当労働行為救済申立事件の命令概要

 当委員会が命令を発した不当労働行為救済申立事件について、事件概要とそれに対する判断を紹介しています。
なお、命令の全文や他都道府県の救済命令をご覧になりたい場合は、中央労働委員会HP「労働委員会関係命令・裁判例データベース」<外部リンク>をご参照ください。

岐労委令和3年(不)第2号事件

1 事件の概要

 本件は、被申立人(以下「会社」という。)が、(1)申立人(以下「組合」という。)の「2020年7月要求書」に関する令和2年8月26日付け団体交渉(以下「本件団体交渉」という。)の申入れに対し、会社は令和2年8月7日付け「ご連絡」内の「『2020年7月要求書』に対する回答書」において回答しており、交渉すべき事項がないとして団体交渉に応じなかったことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして 、(2)また、組合に対し、会社が運営する施設の従業員休憩室にA4紙大の掲示板を貸与することを認めたにもかかわらず、従業員の反対を理由に貸与しなかったことが労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立て(以下「本件申立て」という。)がなされた事案である。

2 判断要旨

(1)会社が、本件団体交渉の申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為(団体交渉拒否及び支配介入)に該当するか否かについて
 組合から会社に本件団体交渉で申し入れた協議事項は義務的団交事項であって、かつ、その内要求項目「時間外勤務手当請求の指導方法」、「就業規則改正点の周知」及び「暴行事件加害者の処遇」に対する会社の対応は、組合の要求に対しその具体性や追及の程度に応じた回答や主張をなし、それらにつき論拠を示したり、必要な資料を提示したとはいえず、誠実交渉義務を果たしたとは認められないため、団体交渉拒否に該当するものと判断できる。
 なお、会社が本件団体交渉に応じなかったことが、支配介入に該当するか否かについては、「掲示板の貸与」についての団体交渉に応じなかったことが支配介入と評価される余地があるのに対して、それ以外の申入れ事項については誠実交渉義務に違反し団体交渉に応じないことが直ちに組合活動を阻害し、組合の弱体化を招くとまではいえず、これをもって支配介入に該当すると認めることはできないと整理される。
 「掲示板の貸与」については、会社が、多数の従業員の反対を理由に掲示板を貸与していないにもかかわらず、貸与を認めることは既に協議済みであることを理由に掲示板についての団体交渉に応じず、結果として掲示板の貸与に至らなかったことが、支配介入に該当するか否かという争点に集約されると判断できる。これは、(2)において併せて判断する。

(2)会社が、組合に対し、会社が運営する施設内にA4紙大の掲示板を貸与しなかったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当するか否かについて
 掲示板の貸与については労使の合意が確定しており、かつ、組合が貸与するように催告してから相当期間が経過しているところ、会社が主張する一部従業員の反対があったとしても、掲示板の貸与により施設の運営に直ちに支障を生じるとは認めがたく、かつ、会社として掲示板の貸与に向けて必要かつ相当な措置を講じてきたとも認められないから、会社が掲示板の貸与を先送りしてきたことは会社の責めに帰すべき履行遅滞に当たると言わざるを得ない。
 そして掲示板の貸与は、もともとビラの配布等施設内における組合の情報宣伝活動の代替措置であったのであるから、会社が従業員の反対を理由に掲示板の貸与を先送りすることによって、その間、組合の情報宣伝活動に制限がかかった状態が長期に継続し、組合の弱体化につながり得ることになるが、会社は、当然にそのことを認識していたと認めるのが相当である。
 すなわち、会社は広い意味での反組合的認識の下に当該行為が組合の弱体化や運営・活動を妨害する結果をもたらすことを認識していながら当該行為を行う意思を有していたものと推認することができる。
 以上のことから、会社が組合に対し施設内に掲示板を設置し、貸与しなかったことは、組合に対する支配介入に該当すると判断できる。

3 命令内容

(1)会社は、組合が「2020年7月要求書」について令和2年8月26日付けで申し入れた団体交渉要求の項目の内、「時間外勤務手当請求の指導方法」、「就業規則改正点の周知」、「暴行事件加害者の処遇」の3項目について、誠実に団体交渉をしなければならない。
(2)会社は、令和元年7月12日に実施した第3回団体交渉において組合と合意したとおり、施設の休憩室内にA4紙大の掲示板を設置し、貸与しなければならない。
(3)文書交付及び報告義務
(4)申立人のその余の救済申立てを棄却する。

※なお、本件命令に対して、会社は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

 

岐労委令和2年(不)第1号事件

1 事件の概要

 本件は、被申立人(以下「会社」という。)が、(1)申立人(以下「組合」という。)との間において締結された労働協約について改訂の申出(以下「本件改訂申出」という。)を行い有効期間を満了させたことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、(2)また、その後の労使事務折衝や団体交渉において労働協約が失効しているとの態度を取り続けたことが労組法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、(3)会社従業員に対する処遇において労働協約が失効していることを前提とした取扱いを行ったことや会社従業員に対し同様の見解を通知したことが労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立て(以下「本件申立て」という。)がなされた事案である。

2 判断要旨

(1)会社が組合との間において締結された労働協約について本件改訂申出を行い有効期間を満了させたことが労組法第7条第3号に該当するか否かについて
 会社が本件改訂申出を行い労働協約(以下「本件協約」という。)の有効期間を満了させたことは本件申立ての1年以上前の行為である。また、その後の労使事務折衝や団体交渉の一部についても本件申立ての1年以上前に行われている。しかし、これらの各行為は、本件協約においてユニオン・ショップ制(以下「ユ・シ制」という。)が採用されていることが他の親会社傘下の会社との間で「異質」であると評価し、本件協約を失効させユ・シ制を廃止することによって労使関係を見直し親会社傘下の会社内での「等質化」を図ろうとの会社の基本方針に基づいてなされたものであり、各行為の目的、態様及び効果の同一性並びに時間的接着性に鑑み除斥期間を経過しているとは認められない。
 会社が本件改訂申出を行い本件協約の有効期間を満了させたことはユ・シ制の廃止を目的としたものであるが、ユ・シ制を廃止せざるを得ない特段の必要性や緊急性を認めることはできず、この点について会社から十分な説明がなされたとも認められない。また、労使間において十分な協議や交渉を重ねるのに必要な時間的猶予を設けるなどの手続的配慮が講じられたとも認められないから、ユ・シ制の廃止が認められるための要件を欠いているというべきである。その上で本件改訂申出の動機・目的、時期及び当時の労使状況、組合の運営・活動等に及ぼし得る不利益及び労使関係に与える影響を総合的に考慮すると、本件改訂申出により本件協約を有効期間満了に至らしめた行為は、労働協約の改訂過程における労使の実質的対等を侵害するものであって支配介入に当たるものと判断する。

(2)会社が、本件協約に係る労使事務折衝及び団体交渉において本件協約が失効しているとの態度を取り続けたことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか否かについて
 ア 本件改訂申出により本件協約を有効期間満了に至らしめた行為と、イ その後の労使事務折衝や団体交渉において本件協約が有効期間満了によって失効しているとの態度を保持し続けた行為とは、アの行為がイの行為の前提あるいはその手段となっており、目的及び効果を同じくし時間的に接着した一連の行為であるところ、アの行為が支配介入に当たる以上、イの行為も基本的に支配介入に当たるというべきであるが、ユ・シ制を廃止して労使関係の「等質化」を図ろうとする会社の基本方針が、有効期間満了後の会社の行為によって変更されたとは認められないし、これらによって本件協約が有効期間満了により失効しユ・シ制も廃止されたとの会社の立場が変更されたとも認められない。また、依然としてユ・シ制の廃止が認められるための要件を欠いているというべきであり、その上で会社が本件協約が失効しているとの態度を取り続けた動機・目的、その時期や当時の労使状況、組合の運営・活動等に及ぼし得る不利益及び労使関係に与える影響を総合的に考慮すると、労使事務折衝や団体交渉において本件協約が失効しているとの態度を保持し続けた行為も労働協約の改訂過程における労使の実質的対等を侵害するものであって支配介入に当たるものと判断する。

(3)会社が、従業員2名の処遇について従前と処遇を変えることは一切考えていない旨を回答したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当するか否かについて
 組合は、組合を脱退した従業員2名について本件協約に基づき処遇を決定するよう会社に求めたが、会社は処遇を変えることは考えていない旨回答した。しかし本件協約では会社に解雇義務までは課していない。仮に本件協約が失効していなかったとしても、いずれにせよ会社には従業員2名を解雇すべき義務があるとまでは認められず、従業員2名を解雇する意向がない旨回答すること自体は許されているといわざるを得ないから、このことが直ちに組合の運営・活動を阻害し、組合の弱体化をもたらすとまでは認められない。

(4)会社が、本件協約が有効期間満了により失効しているという会社の見解を全従業員に向けて電子メールにより発信したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか否かについて
 組合の争議行為通告により工場に組合旗が掲揚されたことから、会社のB部長が従業員各位あてに電子メールを送信した。当該電子メールの労働協約についての記載部分は確かに会社の立場を示したものであるが、組合が異なる見解であることも併記しており、労使間でこの点についての解釈に争いがあることを示しているに過ぎない。また本件協約について少なくとも有効期間が満了していることそれ自体は組合のA委員長が臨時大会で周知させていると認められるから、これによって組合の自主性を損なうものでもなければ、組織力や団結力に大きな影響を与えるものとはいえない。

(5)会社が、C従業員に対し組合に入っても入らなくてもよいとの説明をしたことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか否かについて
 C従業員の異動に伴いB部長がC従業員から組合への加入義務の有無について問われた際のB部長の説明は、会社の立場と同時に組合がこれと異なる見解であることも明らかにしている。また、C従業員からの質問に対して答えただけであって、組合に加入しようとしている従業員に対して会社の方から加入しないように慫慂した(=そそのかした)ものではなく、最終的には加入について当該従業員の判断に委ねていると認められ、C従業員が組合に加入しないのはあくまでその判断によるものと認めるのが相当であるから、B部長の説明の内容が直ちに組合の運営や活動に大きな影響を及ぼすものとも認められない。確かに会社は、ユ・シ制を廃止することによって労使関係の「等質化」を図るという基本方針を持っていたものの、B部長の説明はいわば両論併記をして結論を最終的に従業員の判断に委ねているので、会社が本件協約が失効しているとの態度を取り続けている行為とは関係がなく、当該行為と一連の行為であるとも認められない。

(6)会社が、本件協約に係る労使事務折衝及び団体交渉において本件協約が失効しているとの態度を取り続けたこと及びユ・シ制の廃止の理由について合理的な理由を示していないことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか否かについて
 会社は、組合からはユ・シ制を廃止しなければならない相当の理由について説明するよう明確に求められているが、これに対する会社の回答は、単に将来、人材交流を進める場合にユ・シ制がその支障になる可能性があるとの抽象的な懸念の表明の域を出ておらず具体性を欠いている。また最後の団体交渉に至るまでの間に実際にユ・シ制が人材交流の支障になっていたとは認められない。会社から人材交流に関する時期や規模等についての具体的な説明があったとも認められない。また、会社はユ・シ制の廃止ありきではないとしながら、最初の労使事務折衝から最後の団体交渉までの間本件協約が失効しこれに伴ってユ・シ制もいったんは廃止されているとの態度を保持し続けていると認めるのが相当であり、この点に関する会社の主張は理由がない。
 なお、会社の誠実交渉義務については組合側の合意形成に向けての努力の有無についても検討する必要があるが、本件においてはもともと比較的円満な労使関係が形成されていたにもかかわらず、本件改訂申出によって労使対立を生む結果になったこと、本件改訂申出により本件協約の有効期間を満了させたことに引き続き労使事務折衝や団体交渉において本件協約が失効しているとの態度を保持し続けた行為が支配介入に当たることからすれば、基本的に組合側の理解を得るべく妥結に向けての十分な説明と交渉努力を重ねるべき義務は会社側にあるというべきである。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人に対し、申立人と被申立人間で締結された労働協約について被申立人が申し入れた改訂に関する事項を交渉事項とする団体交渉が妥結するまでの間、同労働協約の各条項について改訂の申入れ前と同様の取扱いをしなければならない。
(2)被申立人は、申立人との間で前項の労働協約の改訂に関する団体交渉を行うに当たり前項のとおり取り扱うとともに、同労働協約の改訂の理由について必要に応じて資料を提示するなどした上で具体的に説明し、誠実に対応しなければならない。
(3)文書交付及び報告義務
(4)申立人のその余の救済申立ては、これを棄却する。

※なお、本件命令に対して、会社は中央労働委員会に再審査を申し立てたが、中央労働委員会において和解が成立し、本件命令は労働組合法第27条の14第3項により失効した。

 

岐労委平成30年(不)第1号事件

1 事件の概要

 本件は、(1)被申立人(以下「会社」という。)が会社B店に勤務していた組合員Cに対し発出した配置転換命令(以下「本件配転命令」という。)は、申立人(以下「組合」という。)のA代表が勤務していたB店からA代表を支持する従業員を分離又は減少させることによって組合の運営を弱体化させることを意図してなされたものであるから、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第3号の支配介入に該当するとして、(2)会社のA代表に対する訓戒の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)は、A代表が組合の組合員であるが故に行われた違法な不利益処分であるとともに、組合に所属すれば会社からの攻撃を免れないといった恐怖感を醸成する目的でなされたものであるから、労組法第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の支配介入に該当するとして救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

(1)本件配転命令は労組法第7条第3号の支配介入に該当するか否かについて
 本件配転命令にはその必要性や補充性は認められない。また、会社が解雇権を濫用してA代表を解雇したり、反会社的な従業員を禁忌する姿勢を示したり、比較的些細な言動についても注意を与えたりしたなどの対応は、A代表あるいはこれに与する者を忌み嫌うものであったと解することができる。先行して他の組合員に対して行われた配置転換命令とともにC組合員への本件配転命令も、A代表やこれに与する従業員を忌み嫌ってなされたものと解すべきである。よって、本件配転命令は組合に対する支配介入に該当する不当労働行為であると解すべきである。

(2)本件懲戒処分は労組法第7条第1号の不利益処分及び同条第3号の支配介入に該当するか否かについて
 会社が主張するような、A代表がB店の一部従業員に対し、A代表からパワハラを受けたとする旨の申告を会社に対して行ったか否かを確認するような言動に及んだこと、A代表の当該の言動は1時間もの間繰り返されたこと、当該言動によりその相手方となった一従業員が強いストレスを感じ体調不良を訴えるとともに倒れ込んだこと等々を認めるに足る証拠はないというべきで、会社が行った本件懲戒処分は手続的に不適法なものである。会社が敢えて本件懲戒処分を完遂したのは、A代表が組合員であることを理由としてA代表に不利益を科す意図があったからであり、またこうした圧力又は牽制をかけることによって組合活動を制約又は制限し組合の弱体化又は解体等を図ろうとしたことに他ならないと推認することができる。本件懲戒処分は、A代表に対する不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入にも該当する不当労働行為であると解すべきである。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人の組合員を不当に配置転換し又は懲戒処分するなどして、申立人の組合活動に支配介入してはならない。
(2)被申立人は、申立人の組合員を不当に懲戒処分するなどして申立人の組合員を不利益に取り扱ってはならない。
(3)被申立人は、申立人のA代表に対する訓戒の懲戒処分がなかったものとして取り扱わなければならない。
(4)文書交付及び報告義務
(5)申立人のその余の救済申立てを棄却する。

 

岐労委平成27年(不)第3号事件

1 事件の概要

 本件は、被申立人個人事業主(以下「代表」という。)が、(1)申立人組合(以下「組合」という。)からの被申立人の従業員であった組合員への未払賃金の支払いなどを内容とする書面で申し入れたとされる団体交渉及び文書回答要請に応じなかったこと、(2)その後に組合から行われたとされる組合員への未払賃金の支払いなどを内容とする団体交渉の申入れに対しても不誠実な対応を取り続けたことが不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

(1)被申立人の従業員であった組合員への未払賃金の支払いなどを内容とする書面で申し入れたとされる団体交渉及び文書回答要請に応じなかったことについて
 組合は、組合員への未払賃金に関して代表と面談し、その後、代表が約束したとされる回答文書の提出と団体交渉開催の要請に応諾するよう連絡を求める旨記載した平成27年11月23日付け書面を代表に郵送し、その書面が代表に配達されたことが認められる。このことから少なくとも組合員への未払賃金の支払いに関する団体交渉が申し入れられたものと判断され、代表はこれに応諾する義務がある。一方代表は、団体交渉応諾の連絡要請に一切応答していないし、組合に対し応答しないことについての説明を行ったという事情も一切窺われないから、代表の対応は労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号の不当労働行為に該当する。

(2)その後に行われたとされる組合員への未払賃金の支払いなどを内容とする団体交渉の申入れに対しても不誠実な対応を取り続けたことについて
 組合は、代表との面談後さらに4回に渡り面談を行い、団体交渉の応諾の意思表示及び文書回答要請のみならず未払賃金の支払いを求めたと主張する。仮に、組合が主張する内容で面談が行われていたとしても、未払賃金の具体的な支払方法を示すよう求めたことについては未払賃金の支払いを協議事項とする団体交渉の申入れとみることができ、いずれも団体交渉申入れが繰り返されていたものとみられる。したがって、当委員会としては、争点(2)に対する判断については、争点(1)に対して、代表の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当すると判断したことをもって足りるものと判断する。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人から申立てのあった申立人の組合員への未払賃金の支払いに関する団体交渉に応じなければならない。
(2)申立人のその余の申立てを棄却する。

 

岐労委平成26年(不)第1号事件

1 事件の概要

 本件は、被申立人会社(以下「会社」という。)が、申立人組合(以下「組合」という。)の執行委員長であるA1(以下「A1委員長」という。)に対して行った5回の懲戒処分及び降格並びに組合の書記次長であるA2(以下「A2書記次長」という。)に対して行った2回の懲戒処分を労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号に該当する不当労働行為であるとして、また、会社がA1委員長に対する懲戒処分問題を議題とする団体交渉を拒否したのは労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

(1)A1委員長の私語に対する昇給停止処分について
 その当時、労使が対立関係にあったことや、私語に対する処分としては異例であると思われること、会社の業務に現実の支障を生じたとは認められないこと、非組合員についての同種事例では口頭注意で終わっていると推認できること等から、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当する。

(2)A1委員長の(1)以外の処分及び降格並びにA2書記次長の処分について
 (1)以外の処分については、処分の対象となる非違行為の態様や、過去の処分歴、非組合員の事例との比較検討においても特に重いとは認められず、組合員であることの故をもってなされたものと認めるに足りない。

(3)A1委員長の処分問題を議題とする団体交渉を拒否したか否か
 A1委員長の懲戒処分の撤回については、必ずしも中心的な団体交渉事項にはなっていなかったと認められ、時間切れになったり、組合側からの質問がないまま終了したものも少なくないが、もとよりこれは会社側の団交拒否によるものとは認められない。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人組合員A1に対して平成25年7月20日付けでなされた平成25年8月から平成26年3月までの8か月間の昇給停止処分がなかったものとして取り扱うとともに、平成25年8月から平成26年3月までの間に同人が得たであろう昇給分相当額を支払わなければならない。
(2)その余の申立てを棄却する。

 

岐労委平成24年(不)第2号・第4号、平成25年(不)第1号事件

1 事件の概要

 本件は、(1)被申立人会社(以下「会社」という。)が申立人組合(以下「組合」という。)から提出された要求項目に具体的な回答をしなかったことや団体交渉に交渉権限を有する者を参加させなかったことは不誠実団交の、(2)会社が社内報で組合からの脱退を慫慂した(=そそのかした)ことは支配介入のそれぞれ不当労働行為に当たるとして(以上、平成24年(不)第2号事件)、(3)組合から求められた夏季一時金の支給金額の根拠等を明らかにしなかった会社の態度は不誠実団交の不当労働行為に当たるとして(平成24年(不)第4号事件)、(4)会社が組合役員4名に対し、源泉徴収義務に基づく税務手続きを行わなかったことは不利益取扱いの、また、(5)会社が年末一時金に関する団体交渉において、各種手当等とセットでなければ妥結しないと固執したことや今後も同じ回答を繰り返す旨を表明したことは団体交渉拒否の不当労働行為に当たるとして(以上、平成25年(不)第1号事件)、それぞれ救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

(1)会社が組合から提出された要求項目に具体的な回答をしなかったことや団体交渉に交渉権限を有する者を参加させなかったことについて
 会社が要求項目に具体的な回答をしなかったことについては、組合がその要求の内容、根拠について説明すべき立場にあったが事実上それを行っていないと推認でき、会社が意見を聴取してから回答しようとしたことには一定の理由があると考えられるため、不当労働行為に当たるとまでは言えない。また、会社が団体交渉において質問事項についてその場で回答せず、持ち帰って回答できるか否かを含め検討するとしたことをもっては、直ちに不誠実団交であるということはできない。

(2)会社が社内報で組合からの脱退を慫慂したことについて
 一部の社内報の記事について社内報の発行時期、発行方法も併せて判断すると、結成後間もなく、組合員の獲得に腐心していたと推測される組合にとっては少なからぬ痛手となった可能性を否定することはできないため、不当労働行為(支配介入)に該当すると言わざるを得ない。

(3)組合から求められた夏季一時金の支給金額の根拠等を明らかにしなかった会社の態度について
 組合の欲する資料の開示がないからといって、会社が開示した資料によっても有意な団体交渉が可能であることから、会社が不誠実であったとまでは断ずることはできない。また、団体交渉の成果が所期のものと異なっていても、それをもって不誠実団交だということもできない。

(4)会社が組合役員4名に対し、源泉徴収義務に基づく税務手続きを行わなかったことについて
 年末一時金交渉について、会社が時間給労働者の賃上げ等とセットでの妥結を求めたこと自体は不合理なものとまでは言えず、その結果として年末一時金の支給が遅れ、組合役員らに対する年内の年末調整事務を行うことができなかったことは、やむを得なかったものと認められる。また、後の給与支払時に会社自ら年末調整の事務処理を行った事実をも考慮すれば、会社の対応が殊更組合嫌悪や反組合的意思ないし動機をもって行われたものとは認められない。

(5)会社が年末一時金に関する団体交渉において、各種手当等とセットでなければ妥結しないと固執したことや今後も同じ回答を繰り返す旨を表明したことについて
 会社は組合との一連の交渉を経て回答していること、比較的近接した期間内に合意に向け継続して交渉に応じたこと、組合から再提示される要求項目に同じ項目が含まれていても構わないと提案していること、正社員に対する年末一時金及びフルタイム従業員に対する寸志についてセット妥結に至っていないのにもかかわらず組合が合意を表明した額を支給したこと、その後セットでの合意に至ったことを評価すれば、セット妥結という主張は必ずしも頑ななものではなく、会社が組合に対し団体交渉の放棄を求めているとまではいえない。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人の組合員が労働組合から脱退することを慫慂するなどの申立人の組織化に影響を及ぼす記事を掲載した社内報その他の文書を配布するなどして、申立人の運営に支配介入してはならない。
(2)申立人のその余の申立てを棄却する。

※なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた結果、中央労働委員会において一部変更命令(中労委平成26年(不再)第11号<外部リンク>​)が交付されて終結している。

 

岐労委平成24年(不)第1号事件

1 事件の概要

 本件は、申立人ら組合(以下「組合」という。)が被申立人会社(以下「会社」という。)に対し、団交事項目録記載の団交事項等を議題とする団体交渉を申し入れたものの、会社は、申入れの趣旨からは交渉事項を特定して了解することができない、申入内容については十分な回答をしている、会社の名誉を毀損する街宣活動により組合に不信感を抱いた、会社が執った措置についてはそれが合理的なものである、前提事実を誤認する申入れである、申入事項は会社の処分可能事項ではないなどとして、これに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

 団交事項のうち、昼勤者に対する賃金の据置措置及び賃金(住宅手当)引下措置については、その有効性に問題があるとの認識に立った上で組合の要求を真摯に受け止め、真剣かつ誠実な交渉努力をすべきであったのに、会社はそのような対応を全くしていないため、その意味においてなお団体交渉の継続を求める組合の請求には理由があると解すべきである。それら以外の団交事項については、申立て後の団体交渉等を通じて組合からの申入内容が叶えられ解決されていること、団体交渉は誠実に行われたものの交渉が膠着状態に陥っていることなどといったそれぞれの理由から、これ以上に団体交渉の継続を命じる必要はないと解する。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人らが申し入れた団交事項中昼勤者に対する賃金の据置措置及び賃金(住宅手当)引下措置を議題とする団体交渉に、誠実に応じなければならない。
(2)申立人らのその余の申立てを棄却する。

 

岐労委平成21年(不)第1号事件

1 事件の概要

 本件は、(1)被申立人学校法人(以下「法人」という。)が行った申立人組合(以下「組合」という。)の組合員に対する昇給延伸及び(2)本件外懲戒処分に係る教科担任外しが不利益取扱いの不当労働行為に、さらに(3)昇給延伸の撤回及び教壇復帰を議題とする団体交渉を、法人が経営の専権事項又は裁判で係争中であることを理由に拒んだことが団体交渉拒否の不当労働行為に、(4)職員会議等における組合活動への言及等が組合の弱体化を意図した支配介入の不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

(1)組合員に対する昇給延伸について
 組合員X1及びX2に対する昇級延伸については、他の教員と比較して両名の成績が特に不良であったとも認められず、校長及び教頭による勤務評定とは異なる何らかの理由に基づいて決定されたものと言わざるを得ないところ、組合活動以外にその理由を見出すことが困難であり、昇級延伸を行うことによって組合活動の弱体化を企図したものと推認することができるため、不利益取扱いに該当する。

(2)本件外懲戒処分に係る教科担任外しについて
 組合員X3の教科担任外しについては、教員は基本的に校務分掌に関する法人の決定に従うべき義務があると言うべきであり、X3に教科を担当させず学力向上等に関する業務に専従させたことについて業務上の必要性が全くなかったということはできず、また組合活動の故をもってなされたものと認めるにも足りず、当該取扱いがもともとX3の非違行為に端を発していることをも勘案すると、通常甘受すべき程度を超える著しい不利益であるとまでは認められないので、不利益取扱いには該当しない。

(3)昇給延伸の撤回及び教壇復帰を議題とする団体交渉を、法人が経営の専権事項又は裁判で係争中であることを理由に拒んだことについて
 昇級延伸や教壇復帰について団体交渉に応じないとする理由については、一方的に経営権に属する事項であることのみをもって団体交渉の対象から除外する旨を通告するだけでは誠実な対応とは言えないし、係争中であっても団体交渉による自主解決の余地がある以上、拒否する理由には当たらない。よって不誠実団交に該当する。

(4)職員会議等における組合活動への言及等について
 職員会議等における数々の行為については、X3や組合に対する報復や威嚇の要素があったと認めることは困難であり、また組合側の主張する事実を採用するに足る疎明もないことから、組合に対する支配介入には該当しない。

3 命令内容

(1)被申立人は、申立人の組合員X1及びX2に対する昇級延伸はなかったものとして取り扱うとともに、当該昇級延伸がなければ得たであろう賃金相当額と既に支払った賃金額との差額を支払わなければならない。
(2)被申立人は、「組合員X3の教壇への復帰問題」に関して、申立人との団体交渉に応じなければならない。
(3)その余の申立ては棄却する。

 

岐労委平成21年(不)第2号事件

1 事件の概要

 本件は、(1)申立人組合(以下「組合」という。)の組合員の賃金減額問題の解決及び労働条件に関する労働協約の締結を議題とする団体交渉を、業務多忙なため受けられないあるいは個人的に話をする問題であるとして被申立人会社(以下「会社」という。)が拒んだことが団体交渉拒否の不当労働行為に、(2)本件申立て以降に開催された団体交渉において組合の要求した財務諸表等の具体的な資料を提示して説明しなかったことが不誠実な団体交渉の不当労働行為に、(3)組合員に対する賃金減額及び解雇処分は組合員であることを理由として行われた不利益取扱いに当たるとして救済申立てのあった事案である。

2 判断要旨

(1)組合員の賃金減額問題の解決及び労働条件に関する労働協約の締結を議題とする団体交渉を、会社が業務多忙なため受けられないあるいは個人的に話をする問題であるとして拒んだことについて
 申し入れられた交渉事項が賃金減額問題という労働者にとって最重要事項であったことを考慮すると速やかに団体交渉に応じるべきものであり、また会社は日時を調整すればいずれの団体交渉の申入れ時においても速やかに団体交渉に応ずることができたと推認され、団体交渉を拒否した他の諸事由にも理由がないため、団体交渉に応じなかったことは不当労働行為に該当する。

(2)本件申立て以降に開催された団体交渉において組合の要求した財務諸表等の具体的な資料を提示して説明しなかったことについて
 本件申立て以降に開催された9回の団体交渉においては、組合が求める具体的な資料(又はこれに代わる同等の資料)を提示しての説明はしておらず、またその提示までに組合が再三提示を求めていたことにも照らすと、会社の対応は不誠実であったことのそしりを免れず、これらの対応は不当労働行為に該当する。

(3)申立人組合員に対する賃金減額及び解雇処分について
 会社が組合員に対して賃金減額・解雇処分を行った時期は、いずれも組合員が組合に加入して団体交渉を申入れ、また本件申立て等の組合活動を行っていた時期と符合しており、そのためになされたものと推認することができるため、不利益処分の不当労働行為に該当する。

3 命令内容

(1)被申立人は、具体的な資料を提示し説明するなどして誠実に団体交渉を行わなければならない。
(2)被申立人は、申立人の組合員に対する賃金減額及び解雇の各処分がなかったものとして取り扱うとともに、各処分がなければ得たであろう賃金相当額と既に支払われた賃金額との差額を支払わなければならない。
(3)申立人のその余の申立てを棄却する。

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