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あっせんにより解決した事例

 今までに当委員会であっせんを行った事例のうち、解決したものの一部を紹介しています。

賃金・手当に関するもの

夏季一時金

<労働者側の主張>
夏季一時金について、前年同額の支給を求めて数回団体交渉を行ったが、話し合いが進展しない。

<使用者側の主張>
団体交渉で、会社が夏季一時金を出すことができない経営状況であることを説明した。支給金額も当初より譲歩している。

<調整結果>
第1回あっせん時に一時金の支給原資及び算定人数の考え方が労使で異なっていることが判明したため、あっせん員が算定資料を整えた上で再度団体交渉を行うよう助言したところ、団体交渉によって自主解決したため、あっせんは取り下げられた。

未払い賃金の支払い

<労働者側の主張>
未払いの賃金を支払ってほしい。労働日数については合意できたが、勤務時間について主張が食い違い、双方の未払い賃金算定額が大きく違っている。

<使用者側の主張>
賃金を支払うつもりはあるが、組合の対応に不満を持っている。組合が主張している労働時間は組合員Xが勝手に残っていた時間を含めており、金額が大きすぎる。

<調整結果>
第1回あっせん時に労使双方の主張を聞いたところ、双方の対応に不備があったことが認められ、あっせん員が労働時間の認識及び未払い賃金の額について歩み寄るよう助言したところ、使用者側がXに対する未払い賃金分を支払う旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

解雇予告手当の支払い

<労働者側の主張>
解雇された6名(うち組合員5名)に対する解雇予告手当の支払いを求める。

<使用者側の主張>
解雇対象者には、パートタイマー就業規則上の重大な服務規律違反、背信行為があるため、解雇予告手当は支払わない。

<調整結果>
第1回あっせん時に労使双方の主張を聞き、あっせん員が解雇予告通告の有効性にこだわって紛争の長期化を招くことの不利益について助言したところ、雇用関係の終了の確認及び解決金の支払いを内容としたあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

時間外割増賃金の改善と遡及実施等

<労働者側の主張>
過去の内勤手当、有給休暇取得に伴う基本給(日額)及び時間外割増賃金の金額・計算方法は労働基準法に合っていないので、これらの不足分を過去に遡って支払ってほしい。

<使用者側の主張>
経営が苦しいため、上記の手当等の過去分については、一部の支払いで我慢してほしい。

<調整結果>
第1回あっせん時に労使双方の主張を聞き、あっせん員が使用者側の法令違反の問題と実際の支払能力の問題とを切り離して話し合いを行うよう助言したところ、双方ともに誠意ある団体交渉を行う旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

賃金・労働条件の引下げの撤回

<労働者側の主張>
諸手当の見直し及び勤務体制の変更等による労働条件の引下げ提案がされたが、これらの不利益変更については受け入れられないので撤回を求める。

<使用者側の主張>
赤字が続いており、諸経費の削減や人件費の見直し等についてもこれを行う必要に迫られているため、来年度から労働条件について改正する提案を行った。旧態依然のやり方、独特のやり方が温存された分野となってしまっているので、従業員の雇用は守りつつ、現状に合っていない人員体制や諸手当等については内容を合理的なものに見直していく必要があると考えている。

<調整結果>
計3回のあっせんを通じ、あっせん員の使用者側に対する労働条件変更に伴う支出影響額のシミュレーション作成の助言や、あっせん期日外の当事者への意向聴取などにより労使双方の理解が得られ、就業規則の変更に対し合意する旨等を内容としたあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

賃金減額の撤回と過去の減額分の支払い

<労働者側の主張>
一方的な年俸の減額提示を受け、同意しなければ雇用してもらえないため仕方なく減額を受理した。その後組合を結成し団体交渉を重ねてきたが、誠実な回答がされず交渉が行き詰まっている。

<使用者側の主張>
経営は極めて厳しい状況に追い詰められており、組合からの要求に対し以下のとおりの回答が精一杯である。

  • 給料の減俸分の合計額に対し、1ヶ月分の給料を支払う。
  • 今回の紛争の解決をしたときは、年俸を6万円アップする。

<調整結果>
計3回のあっせんを通じ、使用者側の年俸制などに関する認識不足に対するあっせん員の助言や、あっせん期日外の当事者への意向聴取などにより労使双方の理解が得られ、年俸の4分の1を回復するとともに一時金を支払う旨等を内容としたあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

未払い残業代及び賞与の支払い、団体交渉応諾

<労働者側の主張>
組合員の未払残業代及び賞与の支払いを求める。また、それを議題とする団体交渉に応じることを求める。

<使用者側の主張>
残業代は特別手当として固定給を支給しているが、計算すると未払い分はない。賞与は勤務評価により判断して支給しなかったものである。団体交渉は双方の前提条件について合意されれば応じる。

<調整結果>
第1回あっせん時にあっせん員が紛争の長期化を招くことの不利益を使用者に助言し、解決金の支払いによる解決を提案したが拒否したため、さらに団交応諾について助言したところ、団体交渉を行う旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

慰藉料や天引きされた給与の返却及び休業手当の支払い、団体交渉促進

<労働者側の主張>
組合員Aに支払われるべき損害保険金の慰藉料を返却すること、組合員Bの給与から天引きした損害賠償保険の保険料増額分を返却し、自宅待機中の休業手当を支払うこと、組合員Cが就労できなかった期間の休業手当を支払うことを求める。また、それらを議題とする団体交渉を求める。

<使用者側>
組合員Aの慰藉料は保険会社の判断で支払われており保険会社と組合員Aの問題である。また、組合員Bの給与天引きは社会保険労務士とも相談して問題はないと考えている。組合員Cは自己都合により退職したため休業手当を支払う必要はない。団体交渉については別件での労働局の対応もあり、保留にしていただけで拒否はしていない。

<調整結果>
計2回のあっせんを通じ、組合員が起こした事故による損害賠償金として慰謝料の受領や給与天引きをしたとしても、全額を本人に負担させることは過大であることを使用者に説示したが、理解が得られず、労使双方の解決金による金額の調整はできなかったものの、団体交渉を行う旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

<事件の特徴>
本件は、実質的には外国人労働者に係る個別労働関係紛争である。複数の外国人労働者が個人加入する合同労組と当該労働者を雇用していた派遣会社との間で、当該労働者の労働条件に係る紛争解決を交渉議題として団体交渉が行われたが、労使双方の主張の隔たりが埋まらず、その後、会社側が団体交渉に応じなくなったため組合があっせんを申請した事案である。当該労働者の多くが日本語による意思疎通が困難であったため、日本語が堪能な外国人労働者を介して、会社の責任者が立ち会うことなく雇用時における労働条件や雇用後における労働条件の変更に関する説明、退職の意思確認を行うなど、会社が労務管理を主体的かつ適正に行っていなかったことが、労使紛争の背景にあったと考えられる。こういった紛争を防止するためには、外国語に翻訳された就業規則等の作成など外国人労働者の労働環境の整備を図る必要がある。

労働条件に関するもの

みなし労働時間制に関する協定で定める労働時間数の変更

<労働者側の主張>
みなし労働時間制に関する協定で定める労働時間数を、15時間/月から30時間/月に変更することを求める。

<使用者側の主張>
みなし労働時間数を30時間/月とすることには応じられない。

<調整結果>
第1回あっせん時に労使双方の主張を聞いたところ、双方ともにみなし労働時間制への理解不足があったことが認められ、あっせん員が労働者側の本来の要求である過去の時間外手当の追加支給に対して歩み寄るよう助言したところ、使用者側が既に支払済みの時間外手当と本来支払われるべき時間外手当との差額を支払う旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

団体交渉の促進

団体交渉開催の促進

<労働者側の主張>
組合員に対する不当な取扱い及び労働条件の改善を求めて団体交渉を申入れたが、具体的な理由説明がなければ応じられない旨の回答があったため、早急な団体交渉の開催を求める。

<使用者側の主張>
不当な取扱い等の事実はない。団体交渉の開催を求める理由を明らかにしなければ、応じることはできない。

<調整結果>
第1回あっせん時に、あっせん員が双方の主張を聴取して団体交渉のあるべき姿などについて説示を行ったところ、使用者が団体交渉に応じる姿勢を見せたため、誠実な団体交渉を実施する旨のあっせん案を示したところ、労使双方が受諾し解決となった。

団体交渉の促進と処分の撤回等

<労働者側の主張>
上部団体も参加した団体交渉に応じてほしい。また、団体交渉要求事項である教職員の処分について話し合いたい。あっせん申請後の不利益取扱いについても撤回してほしい。

<使用者側の主張>
従来より団体交渉を拒否したことはない。教職員の処分については正式な手続きを経て決定しており、団体交渉の議題になじまないし、再検討はできない。

<調整結果>
計4回のあっせんが行われ、あっせん員が双方の主張を聴取するとともに労使関係のあるべき姿などについての説示を行ったところ、上部団体の参加による団体交渉については労使双方に歩み寄りの姿勢が見られ、上部団体役員の団体交渉への参加を認め誠実な団体交渉の促進に努める旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。なお、教職員の処分については労働審判に申立てがなされて取下げられた。

団体交渉の拒否1

<労働者側の主張>
団体交渉を申し入れても拒否され、組合員の労働条件等について確認ができないため、団体交渉に応じてほしい。

<使用者側の主張>
組合とは直接話をしたくない。

<調整結果>
第1回あっせん時に使用者側には労使交渉に不慣れなところが見受けられたが、あっせん員の説明により組合に対する不信感が払拭されたため組合に対する理解が示された。その後労使双方に歩み寄りの姿勢が見られ、使用者は誠実に団体交渉に応じる旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

団体交渉の拒否2

<労働者側の主張>
使用者が、退職した組合員個人に関する団体交渉について拒否しているのは違法であるから応じるべきである。

<使用者側の主張>
組合員の問題に関する事実確認ができていない状況では、団体交渉を行う意味がない。また、別途組合員より訴訟が提起されているのであるから、そちらで解決されれば良い。

<調整結果>
第1回あっせん時に、必要なことは全て書面で回答済みであり団体交渉は不要とする使用者側に対し、あっせん員から訴訟の提起及び書面による回答をしていることは団体交渉拒否の理由にはならないことを説明したところ、団体交渉応諾の姿勢が示された。その後、使用者は誠実に団体交渉に応じる旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

誠実な団体交渉の応諾等

<労働者側の主張>
使用者側の主張には問題解決の交渉姿勢が見られないため、誠実な団体交渉に応じることを求める。また、使用者側の発言における組合員に対するパワハラや退職勧奨の事実を認め、謝罪するなど当該問題への解決を求める。

<使用者側の主張>
資料を提示して面談の背景や教育状況の説明を行うなどして誠実に対応しているし、忙しい中時間をとって団体交渉に出席している。また、仮に指摘するような発言があったとしても、それは「職務上のアドバイス」であり退職勧奨ではないし、パワハラもないため謝罪はできない。

<調整結果>
計2回のあっせんを通じ、退職を前提としたあっせん員の提案を労使双方が受け入れ、退職時の条件を示したあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

団体交渉の延期

<労働者側の主張>
派遣社員であった組合員についての団交を申し込み、会社側と開催日時について折衝を行ってきたが、一旦は決まった期日についても、担当者の多忙等を理由に延期されたまま、実現に至っていない状況が続いている。組合からの団交申入書に対して、会社側が出した事前回答の文書どおりに団体交渉を開催するように求める。

<使用者側の主張>
組合側は組合員についての解雇問題があると言っているが、これは当社との雇用契約期間の満了による離職であって、「解雇」という事実自体がそもそも存在していない。会社としてはすべきことはしたつもりであり、組合からの要求については全く理解ができないが、労働委員会でのあっせんには応じるつもりである。

<調整結果>
第1回あっせん時にあっせん員の説示により使用者側の団体交渉に対する認識が改善されたため、労使双方に歩み寄りの姿勢が見られた。使用者側は誠実に団体交渉に応じる旨のあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。

年末一時金の回答根拠となる説明や資料の提供

<労働者側の主張>
会社は、不当労働行為救済申立事件における和解協定を理由に、年末一時金の回答根拠となる資料開示や内容説明を拒んでいることから、資料開示及び説明を求める。

<使用者側の主張>
和解協定書の条項に基づいて年末一時金の回答根拠となる資料開示をしているにも拘らず、組合がそれ以上の要求(新たな資料開示や資料の内容説明など)をしている。開示した資料の内容まで説明すべきとは考えていない。

<調整結果>
計2回のあっせん及び期日間における労使双方との調整を通じて、あっせん員から使用者側に対し、労働者側が和解協定に挙げられていない資料の開示を要求すること自体が禁止されているわけではないことや開示した資料の内容説明の必要性について説示したところ、労使双方に歩み寄りの姿勢が見られた。資料の開示については労働者側が資料開示の必要性を説明し、使用者側はこれに誠実に対応すること、開示した資料については使用者側が回答の根拠を説明するために用いるものであることを確認するあっせん案を労使双方が受諾し解決となった。


 なお、中央労働委員会においても調整事例を紹介していますので、参考になさってください。
 「労働紛争の調整事例と解説」(中央労働委員会)<外部リンク>

最終更新日:2020年07月19日