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可児市自治連絡協議会

可児市自治連絡協議会(可児市)へアドバイザーを派遣しました

 可児市自治連絡協議会では、市内14地区の自治連合会長が会員となり、自治精神の涵養と市民生活の進歩向上、並びに市政の普及と民意の反映を図ることを目的に、自治会運営についての調査研究や情報交換、コミュニティの醸成及び活動推進に関する活動などを実施しています。今年度の取り組みの1つとして、地域コミュニティ全体に視点をあてた「地区センター長との合同研修会」の実施を計画しました。「地域課題を解決するための住民自治の拠点」としての地区センターの役割について、市内14箇所の地区センター長と共に学ぶ合同研修会として、講演会を10月18日(月曜日)にリモートで開催しました。

 「ぎふ地域の絆づくり支援センター」では、「岐阜県地域の課題解決応援事業」により、この講演会に講師として、岐阜大学 地域協学センター センター長 益川浩一氏を派遣しました。

 当日は、「地域コミュニティの拠点としての地区センターの役割」と題し、益川センター長の講演がありました。

主な講演内容

 1 地区センターの役割

 公民館は、人々が集まり、さまざまな事を学び合って、地域の力にしていくという目的で、戦後すぐに設置された。1960年代に提唱された「公民館3階建論」は、現在の地区センターの役割にも参考になる。

  • 公民館3階建論とは

 基盤となる1階部分は、まちの「茶の間」「縁側」「リビング」で、人々が気軽に集まり、顔見知りになってつながりあい、関係性が生まれる場所。2階部分は、1階部分で培った人間関係を基に、共同活動(クラブ・サークル活動)を行う場所。3階部分は、学習活動や地域の課題解決に向けた活動など、より高度な系統的学習を行う場所。

 2 地域の課題 「地域のつながりがなくなった」

 【青いおしっこ】の話。初めての子育てに奮闘中の母親が、テレビコマーシャルで、吸水力の良さをあらわすために、白い紙オムツに青い水を垂らすのを見て、赤ちゃんはいつか青いおしっこをするものだと信じ込み「赤ちゃんが、青いおしっこをしない」と保健所に相談をする話。その背景には、子育ての先輩である祖父母は遠方にあり、引っ越したばかりで近所に知り合いもなく、すぐに聞ける状況になかったことがある。そこには、孤立化した子育てがあったのだろうと考えられる。まさに、子育ての孤立化、個別化という現状が広がりをみせ、地域の中で子育てをしようという雰囲気がなくなってきている。それは、各家庭の中にも広がってきているのかもしれない。その証拠に、最近痛ましいニュースが報道されている。虐待がなかなか見つけられないのも家庭に孤立化・個別化が起きているからである。地域のつながりがなくなったことが、地域課題の最たるものである。

 国の第二期教育振興計画は、教育活動を通して人々が絆を作り関係性を深める事を基盤とし、活力あるコミュニティの形成である。裏を返せば、今絆が無くなってきて、それにより地域が衰退している実態がある。顔の見える距離における、あてにし、あてにされる関係(=ソーシャル・キャピタル)をいかに地域に蓄えていくのかが今の地域の大きな課題といえる。だからこそ絆ということが改めて見直されることになる。そこで、地区センターの大きな役割は、特に一階部分で、気軽に集まって人間関係を作ることである。人間関係というのは、資本である。資本は地域や自分たちの中に備えておかなければならないものである。地区センターや学校などの資本と同様に地域に必ず備えておくものとして人間関係がある。

 それでは、人間関係をどう蓄えるのか。学びをとおした、共同体験、共有体験、成功体験、失敗体験を積み上げるなかで、お互いの安心感や信頼感、結びつき、顔見知りの関係が出来上がり、さらに積みあがる中で人間関係が蓄えられていく。その積み上げる場として、地区センターは大きな役割を持っている。

「運も実力」、「縁も実力」

 学習教育というと公民館の場合、個人一人が知識をアップさせることに重きをおかれることがある。現代のつながりが薄くなってきている時代では、個の成長発達と共に、個と個の間にあるもの(人間関係・絆)を高めていくことも地区センターの大事な役割である。縁も実力ということで、地区センターにおける共同活動を通して人間関係を深めていく、そこに本当の大きな役割がある。しかし、今、コロナでできないということが課題になってくるが、そこが地区センター・公民館の役割であると認識すべきである。つまり、学んだことや一緒に体験した「学びの成果」は、個の中に閉じ込めるのではなく、人々に分かち伝えていくこと。自分たちが学んだことを分かち伝えるという視点がとても大事である。わかち伝えあう場としての地区センターの役割が重要である。

 3 実践事例

 〇組織体制の事例 (長野県松本市)

 松本市は、地域づくりセンター体制という形で地区センターを捉えている。その中には、地域振興機能を備えた地域づくりセンター、学習機能を備えた公民館、地域福祉機能を備えた福祉ひろばがあり、その基盤に自治会を置き、連携しながら地域づくりを進めている。地域、地区支援機関、市民活動団体や大学、行政などと総合的な協働体制をとっている。

 〇共同体験・共有体験の事例(公民館の優良事例を集めた冊子「公民館」より)

「公民館(kominkan)」は、ローマ字表記され、世界に向けて発信されている。また、福祉で有名な北欧のスタディサークルとともに、世界の優れた社会教育実践であるとされている。

 事例1 遊遊くらぶ(大分県佐伯市)世代間交流

 高齢者が子どもたちに昔のことを教え、今の流行りを子どもたちが高齢者に教えるという双方向的な交流をしている。

 事例2 ののいち町民大学校(石川県野々市町)地域活性化

 大学と公民館が連携し、町民向けの教育講座を開催している。

 事例3 赤ちゃんひろば(埼玉県三郷市)子育て支援

 若い保護者が気軽に参加できる場で、子育て世代同士のほか、子育ての先輩がアドバイスをするなどして交流をしている。

 事例4 キャリア教育(愛媛県松山市)地域学校共同活動

 公民館と学校が連携し、子ども達の健やかな育ちを地域全体で推進している。地域密着型の職場体験により、子ども達が地域の一員としての自覚が芽生えた。

 事例5 児童通学合宿(熊本県宇城市)地域の教育力

 公民館を宿泊拠点とし、身の回りのことを全て自分達で行う集団宿泊活動を行なっている。子ども達は自立する力を身につけ、地域の大人達は子ども達とのさまざまな体験活動での交流により、地域全体で子ども達を育成しようという意識が高まった。

 事例6 生産教育(北海道置戸町)町おこし

 「生産教育」の学習講座を開設し、地域の伝統的な木材工芸技術の再開発を実施した。これに興味をもった、若い作家などが移住してくるなど町おこしに一役買っている。また、図書館と連携し、地域の産業振興に役立つ情報提供の面で協力を行った。

 事例7 民話の収集・出版(千葉県木更津市)ふるさと学習

 市民が地域に伝わる民話の「民話刊行会」を組織し、公民館は、事務局として活動を全面的に支えた。地域の高齢者から聞き取つた1000を超える民話を2冊の本にまとめ出版した。

 事例8 東山地区ESDフェスティバル(岡山県岡山市)持続可能な社会づくり

 環境問題だけでなく、国際交流、多文化共生、人権など、多様な課題を取り上げ、楽しみながら地域の人々が交流するフェスティバルが公民館により毎年開催されている。さまざまな人たちが、世代を超えて絆を深め、学校やNPO、ボランティアグループや地域の民間団体がつながる機会となっている。

 事例9 人々のセンター=ベンガル語でGanokendra(バングラデシュ)職業教育

 機織りの講習で技術を身に付け、自分で布を織り、それを売って現金収入にする。教育機会に恵まれない、主に女性を対象に識字、収入向上、衛生、健康などの活動が行われ成果をあげている。読み書きが生活向上につながるため、人々の積極的な参加を促している。

 〇学びの「循環」事例

岐阜大学と十六銀行が産学連携プロジェクトとして、シニア向けの「くるる(きく、みる、するの語尾を取り)セミナー」を行っている。

 最初は気軽に、何か楽しいことを学びたいと参加した人たちの楽しいという気持ちが人との関係性を深め、自主的な活動につながる。さらに他の人に分かち伝えたいとなれば、ボランティア活動やさまざまな地域活動に参加をして社会への関りを持つ。そのような形で学びや活動を広げていくと人間関係が広まり、何かを一緒にやるという絆も深まり、究極的な目的である繋がりづくりになる。つまり活動の循環、輪になっていく。

 〇「成果を活かす」事例  市民講師制度

 自分が学んだ知識や特技を生かして講師になり、講座の開設やイベント企画をする、学ぶ側から教える側に回る制度が、広がりをみせている。県内では、多治見市が生涯学習講座を目的や性質により「3つのカタチ」に使い分けている。

(1)「生涯学習市民講座」・・・地域が直面している課題である、まちづくり、環境、ボランティアなどに取り組む講座で、収益性はあまり問わない。  

(2)「たじみオープンキャンパス」・・・市民講師による趣味・教養講座で多彩な講座が可能になる。収益を生むことも目的のひとつである。

(3)「まなびの森」・・・大学と連携した教養講座で、収益性を問い、利益も追求する。

 4 まとめ

 「公民館の枠を外し、地区センターになったからこそ、あまり狭く教育文化を限定せず、福祉や産業振興などにも視線を広げ、幅広い活動を行っている事例を参考に、人のつながりを作る役割を地区センターは持っていることを認識してほしい。」と講演を結ばれました。

 当日は、自治連合会長及び地区センター長の方、26名が参加されました。
 可児市自治連絡協議会では、研修で得た知識や気づきを、今後の実施事業等に活用するとともに、紹介のあった他市の事例なども参考にしながら、今後の地域コミュニティ活性化について検討を行い、協働した取り組みを進めるとのことです。

講師の益川先生(リモート画面) 講演の様子(1) 講演の様子(2)
講師の先生 講演会の様子 講演会の様子