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知事記者会見(平成21年12月25日)
平成21年12月25日(金曜日)午後3時
知事 |
今日は今年最後の会見になろうかと思いますので、この1年を振り返ってということと、それから今日の夕方、ひょっとしたら深夜になるかもしれないと言われておりますけれども来年度の国の予算が閣議決定まで行くという前提で作業が進んでいるようでございます。この数日間のやり取りでかなりのところは見えてまいりましたので、それについての感想めいたお話を申し上げようと思っております。 まず、平成22年度の政府予算でありますが、細かいところはまだ来ておりませんし、個々の項目についてはまた精査したいと思っておりますが、既に知事会でも地方六団体の共同声明という格好で意見を出しております地方財政施策全般という意味では今回、11年ぶりに地方交付税の増額がみられたということでございます。私ども地方交付税の復元・増額ということを一貫して言ってきたわけで、そうした要請に御配慮いただいたということで評価をしているわけでございます。 他方、子ども手当の地方負担の問題については、全国一律の現金給付というものは国が担当して全額を負担するということが筋ではないかと。一方で個々のサービスについて地域が負担をするということはもちろんあり得るということで、国と地方の役割分担をきちんとして、それにふさわしい財政負担を、というような議論をしてきたわけです。今回暫定措置ということではございますが、子ども手当と児童手当を併用するという形である種、財源的なやりくりをしたということで、これまでの私どもの主張といいますか、国と地方との役割分担を睨んだあり方という観点からは、特に「地域主権」を標榜する流れとは言えないので残念であるという思いを、私ども持っております。 それから、ざっと眺めてみますと、地方交付税については配慮していただいたわけでございますが、一方で県税収入の落ち込みとかいろいろ考えてみますと、これから精査してまいりますけれども、おそらく県にとってトータルの一般財源としては増額にはならないのではないかという見通しでございます。これから平成22年度予算を編成してまいりますけれども、大変厳しい状況であることには変わりはないわけでございます。 それから、高等学校の授業料無償化と子ども手当ですが、前者については県がすでに減免している部分については引き続き県負担でやってくれという話でございまして、足らざるところに国のお金が下りてくるということでございますので、財政的にはプラスマイナスゼロということでございます。子ども手当の創設のほうも、これまでやっております児童手当、約45億円でございますが、これも従来どおり支給するということでございますので、この部分もプラスマイナスゼロということでございます。 ということで、これまでいろいろな項目ごとに、結論如何では県財政に大変ドラスティックな影響が及ぼされるのではないかと思っておりましたが、全体として厳しい状況は変わらないものの、かといってひどく悪くなるということでもありません。改めて今回の国予算を詳しく精査する中で県としての来年度の予算編成、そしてアクションプランについてこれから早急に検討してまいりますけれども、来年度予算に関する限りはこれまでの検討の流れから、前提がそんなに大きく乖離する、大幅に変わるということにはならないのではないかと思っております。 ただ、今度は多くの項目で平成23年度に先送りされた問題がかなりありますし、23年度に改めて制度設計をするという問題がありまして、そういう中でいろいろな財源の問題が起こってくるということがあるわけでございまして、それらについてはまた23年度予算の時に前提がどうなのか、ということになります。たとえば、1万3千円の子ども手当についても地方負担、企業負担を入れて何とか暫定措置としてまとまったわけでございまして、それが23年度には2万6千円になる、本格的な制度設計をするということになりますと、この2万6千円の制度設計に必要な財源をどうするのかという今回よりもはるかに大きい問題が起こってくるわけでございます。そういったこともいわば先送りになっておりますので、また23年度予算に向けて来年、いろいろな議論をしていかなければならないと、これは先の話でございますけれども思っております。といったところが今回の政府の予算編成に対する大まかな印象でございます。 1月から2月にかけて、これから来年度予算と向こう3年間のアクションプラン作りを精力的にやっていきたいと思いますし、その過程でいろいろな方々のご意見もよく聞きながら、議論しながら整理をしていきたいと思っております。 それからもう一つは、今日が最後でございますので、今年1年を振り返ってということでございます。 年の初めに大きく3つの課題があるといいますか、三兎を追うという言い方もしたわけでございますが、当面の大不況、経済危機をどう乗り切っていくかということと、それから2番目が本格的な人口減少社会が到来した中でどのように活力ある地域づくりをしていくかということ。そして、3番目がこの財政危機をどう克服していくかということでございました。この3つが今年1年の大きなテーマになるのではないかということを年頭に申し上げたわけでございまして、この3つが我々にとって1年間を通じての大きな課題であり続けたわけです。 平成20年度予算の年度末の補正、それから21年度予算の6月の補正、国の補正予算も活かしながら、緊急経済対策はかなりきめ細かに手を打ってきたつもりでございますが、今後ともまだまだ2番底ということも懸念されます。それから雇用の面でいい流れが来るにはまだまだ時間がかかるということでございますので、そういう意味で、きめ細やかな対策を機動的に打っていくということをこれからもやっていかなくてはいけないということで、課題が残っているわけでございます。 2番目の課題につきましては、市場開拓ということで、海外市場でありますとか、あるいはネット市場の開拓でありますとか、あるいは技術開発でありますとか、いろいろな分野で努力をしてまいりました。 また、今年は7月にぎふ清流国体の開催が正式決定いたしましたし、来年6月12日からの「全国豊かな海づくり大会」の開催も決定しました。この2つの、天皇皇后両陛下にご臨席いただいて開催する行事の準備を本格的に開始した年であります。いずれも県民挙げての運動として、地域づくり、あるいはおもてなし、あるいは魅力づくりなど、いろいろな意味でじわじわと運動が進みつつあり、これは非常に前向きな流れとして期待をしているところでございます。 それから、行財政改革につきましては、9月早々に分科会のたたき台をお出ししまして、これから今回の国の予算を踏まえてあと2カ月近くで結論に持っていく、3年間のプランを立てるということで、引き続き宿題になっているということです。 その他に、印象的なことをいくつか申し上げますと、1つは、4月から新型インフルエンザに、危機管理の一環として取り組んできました。 それから、8月末の総選挙の政権交代。この政権交代によって、意思決定の方法やら、国と地方のあり方の見直し、いろいろなところで大きく変わってまいりました。そういう中で、岐阜県知事として、あるいは知事会のメンバーとして、地方分権、あるいは地域主権などについて、いろいろと議論が進んできたと思っております。 それから春先、発端は昨年の11月末ですけれども、テレビの虚偽報道の件がございました。この問題も状況が判明して、私どもとしてはある意味ではほっとした出来事でございました。
その他、この秋には防災ヘリの事故もございまして、私どもの防災ヘリをめぐる危機管理体制について、いろいろな意味で反省と教訓を得て、より安全という点に配慮した管理ルールのもとで、今、再スタートとしたというところでございます。 お手元に「平成21年の県政を振り返って」という資料がございますが、経済対策から始まって、個々のいろいろなことが書いてありますが、総じたお話としては以上のようなことです。 13ページにございますが、今年は伊勢湾台風50年ということで、各地で災害への備えということで、いろいろな議論やイベントがございまして、これもまた今年節目の年として積極的にやらせていただいたということでございます。 この1年振り返った主なところを申し上げますと以上となります。 私の方からは以上です。 |
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記者 |
今振り返られて政権交代の話があったのですが、政権交代が行われて100日近くを迎えたわけですが、知事としてのご感想はどうでしょうか。 |
知事 |
多くの点で変革をしていこうという、そういう意気込みでこの新しい政権がスタートされまして、平成維新という言葉を使ったり、平成革命という言葉を使ったりしておられましたけれども、いろいろな面で大きく舵を切りかえておられますので、まだ正直言って現時点で断定的な評価をするのは、まだどうかなと思います。 これまでのところをみますと、この政権、2つの大きな看板を掲げておられまして、1つ目は官主導から政治主導へと、2つ目が中央集権から地域主権へということでございまして、特に前者の官から政へという流れにつきましては、いろいろな意味で意欲的に、いろいろな手法等を導入されまして、その最も端的な表れが事業仕分けであるわけですが、オープンな形でこうしたから官から政へという流れを作っていくということについては分かりやすいところも多々あったのではないかと思います。 一方、中央集権から地域主権へというテーマについて言いますと、むしろこれから議論が始まるといった方がいいような状態でございます。地域主権戦略会議というのが先般スタートしまして、これから地域主権に向けてさまざまな点を検討する、その最初のテーマが次の通常国会に向けて国と地方の協議の場の法制化ということでありまして、この法制化をめぐって我々も提案をしておりますけれども、この議論があります。それから私自身知事会のまとめ役をやらせてもらっておりますけれども、ひも付き補助金を廃止して、一括交付金化するということについての制度設計、それから義務付け、枠付けの思い切った見直し、こういった辺りから順次議論を進めていこうということでございまして、これからこの地域主権に向けての議論が本格化してくるということです。これまでのところはどちらかというと、地域主権ということを標榜してはおられたのでしょうが、必ずしも十分、一つひとつの結論、決断をされるところで、地域の声にどう向き合っていくか、どう議論していくか、どのようなプロセスでそういった声をくみ上げて結論を出していくかという、その辺りのところが少々見えにくい場面がいくつかあったのではないかと、そんな感じがしております。 私どもとしては、国と地方というのは、そもそも対峙する関係ということはありませんので、むしろ日本という国の形をどう形成していくことが望ましいかという観点から、いわばコラボレーションといいますか、共同作業しながら望ましい役割分担のあり方、そしてそれに沿った権限、あるいは財源、あるいは組織配置、いろいろな議論を進めていくべきですので、そういう意味で今後この地域主権に向けて、積極的な国と地方のコラボレーションが進むような形で、生産的な議論ができればと思っております。 |
記者 |
今回の予算編成の過程で、財務省原案というものが事実上無くなるようなこともあったのですが、かなり前政権と比べると勝手が違うという印象があるのですが、知事自身に戸惑いというものはありますか。 |
知事 |
今までのやり方からすれば、大幅に異なっておりますし、それから暫定税率を含めて、大枠の議論がほとんど最後まで残っておりまして、全体としてどういう規模で、どういうバランスで、というところが最後までなかなか見えにくかったという感じがあります。 個々の予算の査定作業も、事業仕分けの議論はよく見えたわけですが、それを受けて具体的に省庁がどう動き、査定する側がどう査定し、どうなってというところが、必ずしもよく見えない状態です。特に岐阜県でいいますと、県固有の要望として知的クラスターといいますか、産学官で連携をして航空宇宙産業だとか、あるいは陶磁器産業だとか、医療機器の関係とか、いろいろな研究開発を地域でやっていくというテーマの事業があります。これが事業仕分けで全廃とされました。あるいは岐阜大学附属病院が中心になって、たらい回しをしない情報システムといいますか、医療機関の情報、医師の情報を救急車に搭載したIT機器を使って分析をして、この患者はどこへ今お連れするのが一番間違いないかということを即座に割り出してそれにそって救急車が動くというシステムの開発も、他の案件と束ねて、あまり議論も無く廃止とされてしまいましたので、これの復活を強くお願いしていたところであります。これらについては、担当省庁の方では非常に理解をいただいておりまして、積極的に財務省と議論するということでございまして、ただそれがどうなったのか、実は今現在もよく分からないわけでありまして、頑張っていただいているわけですから、おそらくそれなりの結果をいただけるのではないかと期待はしておりますけれども、閣議決定まではちょっとよく分からないものですから、この辺が見えにくいというのが実感です。 それからあと1つは、公共事業の関係でダムについて、今月の中旬に前原大臣から各知事あてにレターが来まして、その中で本予算に向けて今後ダムに頼らない治水をどう進めるかという観点から、いろいろな考え方を整理する、あるいは検証していくということをやるというわけです。その検証の対象となるプロジェクトと対象にならないプロジェクトをまず予算段階で分けて、検証の対象とならないものは、そこで一定の結論が出ると。検証の対象となるものについては、第三者の有識者の委員会で検証作業を進めて、再来年の夏に報告が出るということで、おそらくその間、事実上は事業が止まるのではないかと思います。その辺りの検証の対象と、そうでないものの仕分けがどういうことになっているのか、おそらくその議論の中には例の導水路の話も含まれていると思いますが、これもどういう扱いになるか、非常に関心のある所ですが、まだちょっとよく分かりません。それから公共事業の関係で言いますと、東海北陸自動車道の4車線化、これも本予算に向けて再検討すると、やめるわけではなく、本予算の中で議論すると、こういうお話でしたので、この平成22年度本予算の中でどういう位置付けになるかとか、その他県内の東海環状西回りでありますとか、主要プロジェクトがどういう形でどういうふうに決まって、どういうふうに私どもに伝わってくるのかという、これもちょっとまだ見えない状況であります。私どもとしてはその辺り大いに関心を持って見守っていこうと思いますけれども。 |
記者 |
鳩山政権となって、知事としての評価は点数でいったら何点ぐらいになるか。それと評価するにあたって良いと評価した点、それからマイナスだなと評価した点がありましたらお願いします。 |
知事 |
点数は基準をどこに置くかというのがなかなか難しいわけですし、政権というのは内政もあれば外交もあればその他いろいろな側面がありますので、全部まとめて何点というのはちょっと私としては言いづらいところがあります。いろいろな意味でこれまでの固定概念とか既成概念とか既成事実とか、そういうことをある程度離れて、いろいろなことを見直していこうと、それからできるだけその見直しのプロセスも透明な形にしていこうと、それからそれを政治主導という形で政治家がリーダーシップをとってやっていこうと、そういう姿勢、意気込みというのはわりとよく見えていたのではないかと思います。 私どもも何回か大臣や副大臣、政務官にお目にかかる機会がありましたけれども、非常によく勉強しておられますし、それから地域主権とおっしゃっておられることもありますけれども、率直に意見を聞きたい、聞こうという姿勢も強かったと思います。 そういう意味ではいいスタートを切られたのではないかと思いますが、ただ、マニフェストを実現するということに伴って相当な財源が必要となるわけで、国家財政全体としてマニフェストをどこまで実行するのか、その財源をどうするのか、それから国債発行の金額をどのくらいに留めるのか、予算全体をどうするのか。全体を見定めていくとなかなかどこにもここにも埋蔵金がごろごろあるわけではありませんので、そういう意味で予算を組んでいく過程ではいろいろと苦労もされておられます。暫定措置とか当面はこうするけれども本格的な制度設計は23年度以降という話も入れながら、何とか現実的なところで対応してこられたのかなということで、そういう財政の厳しい現実と、それからどこまでマニフェストを実行に移していくかという中で、非常にご苦労しておられるという姿は私どもも感じるわけでございますけれども、地方のこういう行政を預かる立場としますと、もう少し地域主権という姿勢なり目指すべき方向なりがわかりやすい形で出てきて、そういう考え方に沿って個々の意思決定なり、政策判断なりが為されていくということがもう少し前に出てくるといいと思っております。これはまた先程申し上げましたことで、これからまたいろいろな議論が始まりますので、私どもも積極的にものを申し上げていこうという感じです。 |
記者 |
先程もう少し地域主権を目指すべき方向を明らかにしてほしいということですけれども、逆に知事の方からこうしてほしい、もっとこうしてほしいという部分はありますか。 |
知事 |
一つは国と地方の協議の場を法制化するという議論をしているんですけれども、法制化するまでの間は何もしないというのはおかしな話なので、むしろその法制化の前に事実上、いろいろな形で議論をして、そして国と地方の望ましい役割分担というものに照らして1つ1つ判断していく、議論をしていくというか、そういう場面がもっとあってもいいのではないかという感じがしております。先程いくつか挙げました公共事業の議論につきましても、具体的に、例えばさっきの検証対象とそうでないものとか、個々のプロジェクトがどうなるかとか、今私どもは待っているわけでありまして、どういう基準で整理されるのかとか、よくわからないのです。ですからそういったものも1つの表れなんですけれども、そういうプロセスといいますか、地方との協議をもっともっと事実上取り入れて、それがスムーズにすっと法的な裏付けを持ったものになってくというんですか、そういう流れをもう少し作るとわかりやすかったのではないかなという感じはします。 県単位の陳情要望は県連に対してしてくれとか、こういうものはここに持ってきてくれとか、政務三役でやっているからお役人とやっても仕方がないとか、ありました。ただこの政務三役というのは本当にごく限られた数の方だけですから、アポイントがなかなかとれない。ある知事さんはアポイントを申し込んで実際に返事がきたのが1か月後だったというようなことを苦笑しておられました。私は比較的申し込むと会ってもらえますので、そんなに不都合ということはないのですが、ただ行きますと本当にものすごいスケジュールです。限られた人が個別案件から何から全部聞こうというわけですから、それはもう大変で、システムとして何から何まで大臣・副大臣・政務官だけで応対して聞いて判断していくのは大変だなあと思います。物理的にできなくなりますよね。だからそういう意味でこういうアクセスが難しいという不満が、知事会では一時、非常にありました。 |
記者 |
個別案件ですが、暫定税率がああした形で今後名前を変えて維持するとされたことについてはどうお考えですか。 |
知事 |
暫定税率を廃止するということになりますと、2兆5千億の財源がなくなるわけで、財政が非常に厳しいといっている地方にとっても約8千億の財源がなくなるわけです。それをどうするかという非常に大きな規模の問題でありまして、今回のご決断は、やはり全体の予算を組んでいくうえで財源を睨んで考えると、あの財源というかあの部分をすっぽりただ無くすだけで本当に組めるのだろうかとか、では地方にどう手当するのかとかいうことで、私としては現実的なご判断をされたのではないかなというふうに思います。ただ、この問題は来年度、また23年度の議論が始まるわけなので、課題がなくなったわけではなく、この重たい課題がなおまた残るということですから、おそらくまた23年度に向けては、相当な議論をしていかざるを得ません。併せて環境税の議論も是非論もあるでしょうし、それから地方からは環境税があるのであれば地方環境税ということで、地方への財源の問題も環境政策として対応できるような工夫ができないかとか、そんな提案もしておりますので、そんなこともこれから議論の俎上にのぼってくるんじゃないかと思います。 |
記者 |
全然話が変わるのですが、今日裏金の件で○○○さんが提訴をされましたが、コメントを頂けませんか。 |
知事 |
提訴されたという話は伺いましたけれども、事は裁判上の問題になるわけなので、私どもとしてはまず訴状をきちんと読ませていただいて、それに対してどういうふうに対応していくかということをこれから検討するということでございます。私どもとしてはそういうことで、まずはよくおっしゃることについて検討させていただきたいということで、それ以上のコメントはこの時点では難しいです。 |
(○○○とあるのは、個人情報保護の観点から、非公開としています。)