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笠ヶ岳のライチョウ生息状況調査について
岐阜県には、絶滅が危惧されている「ライチョウ」が、笠ヶ岳、乗鞍岳、御岳などに生息しています。
ライチョウは、本州中部の高山帯にのみ生息する希少な鳥で、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく国内希少野生動植物種に指定される他、国の特別天然記念物や岐阜県の県鳥にも指定されています。
平成29年度は、岐阜県内の生息地のうち、笠ヶ岳のライチョウの生息状況や生息に関わる環境について調査を実施しました。
(写真:笠ヶ岳の山頂)
調査の概要
調査は、「ライチョウなわばり推定調査法ハンドブック(環境省、平成26年)」(以下、「ハンドブック」という。)に基づいて実施しました。
6月から8月にかけて、なわばり形成期、抱卵期、育雛期に、笠ヶ岳に現地調査に入り、ライチョウの生息状況等を調査しました。
主な調査範囲は、笠ヶ岳周辺、笠ヶ岳の北西尾根・南西尾根、笠新道、抜戸岩から抜戸岳北西尾根、クリヤ谷コースとしました。
調査結果
総合的に判断して、笠ヶ岳周辺では、最近の約30年間、ライチョウの生息数は、ほぼ保たれています。
なわばり数などについて
- なわばり数
今回の調査では、なわばり数は19でした。過去の調査では、平成8年度が15,昭和60年度が19で、ほぼ同程度でした。 - ライチョウ生息数
なわばり数から、ハンドブックに基づく方法で算出したところ、今回の調査では48個体と推定されました。
過去の調査では、平成8年度は38,昭和60年度は48で、ほぼ同程度でした。 - 雛の確認数
今回の調査では、目視で確認できた雛の数は15でした。
過去の調査では、平成8年度は47,昭和60年度は38で、雛の確認数は減少しました。
今回の調査は晴天の日が多く、晴天の場合はライチョウが出現しにくい(ハンドブックより)ことや、過去の調査でなわばりが確認されていた場所で調査できなかったこと等の関係もあり、実際の雛の個体数については判断できませんでした。
(左写真:オス、中央の写真:雛連れのメス、右写真:雛)
ライチョウの生息環境について
笠ヶ岳周辺では、巣作りの環境としてのハイマツ、主要な餌となるガンコウランはともに豊富でした。
また、今回の調査で確認できた天敵は、テン、オコジョ、チョウゲンボウでしたが、天敵が特に多いという状況は確認されませんでした。
調査期間中に、登山道上に、登山者のごみが放置されている状況は確認されませんでした。
(左写真:登山道と周囲に広がるハイマツ、中央の写真:ライチョウの巣あと、右写真:ガンコウラン(花の時期:5~6月))
笠ヶ岳のライチョウを保全するために
今回の調査で、笠ヶ岳のライチョウの生息数の減少や生息環境の悪化を示す結果は認められませんでした。
しかしながら、今後も、人により持ち込まれるゴミが原因となって低標高地からやってくる新たな天敵や、ライチョウの餌環境を悪化させるニホンジカ、イノシシ、ニホンザルなどの高山帯への進出などに注意しながら、ライチョウと笠ヶ岳の貴重な環境を保全していく必要があります。
笠ヶ岳に入山される皆様には、ハイマツをはじめとする植物の保全やゴミなどのマナーにご配慮いただき、ライチョウを驚かせないよう、そっと見守っていただくようお願いいたします。