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岐阜県ケアラー支援条例

記事ID:0346831 2024年3月21日更新 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示

目次
 前文
 第一章 総則(第一条―第九条)
 第二章 基本的施策(第十条―第十五条)
 附則

 身近な人に無償で介護、看護、日常生活上の世話等の援助を行うケアラーは、ケアを受ける人たちを支える上で重要な役割を果たしている。
 しかしながら、近年、過重な介護等の負担により学習に支障を来すヤングケアラー、高齢者の介護を高齢者が行う老老介護、高齢の親が中高年の子の生活を支える八〇五〇問題など、ケアに伴う過度な精神的、身体的及び経済的負担により、ケアラーが日常生活に困難を抱え、社会から孤立していることが大きな課題として認識されるようになった。
 とりわけ、ヤングケアラーは、家族のことは家族で解決しなければならないといった価値観や家族のケアは手伝いの延長といった捉え方により、本人やその家族にケアラーの自覚がないこと、本人がケアラーであることを隠そうとすること、家族以外に見守ってくれる身近な大人がいないことなどから、支援が必要な場合であったとしても表面化しにくくなっている。
 岐阜県においては、総人口に占める高齢者の割合は今後も増加し、要介護者等が増加すると見込まれている。また、高齢者のみならず、障害や疾患がある方の中にも、介護や看護を必要とする方が多くいる。さらには、今後も発生が予想される災害や新たな感染症等によって、身近な人がケアを必要とする状況になることも考えられ、誰もがケアラーとして課題に直面する可能性がある。
 こうした状況の中、ケアラーを取り巻く課題の解決を図るためには、ケアラーに対する支援体制の整備と併せて、県民等がケアラーに対する理解を深め、ケアラーが社会的に孤立せず、安心して自分らしく暮らすことができるよう、社会全体で支えていく必要がある。
 ここに、社会全体でケアラーを支えていく仕組みを構築し、全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現を目指して、この条例を制定する。

   第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、ケアラーへの支援(以下「ケアラー支援」という。)に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民、事業者、関係機関及び支援団体の役割を明らかにするとともに、ケアラー支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 ケア 介護、看護、日常生活上の世話その他の援助をいう。
二 ケアラー 心身の機能の低下、負傷、疾病、障害その他の理由により援助を必要とする家族その他の身近な人に対し、無償でケアを行う者をいう。
三 ヤングケアラー ケアラーのうち十八歳未満の者をいう。
四 関係機関 介護、障害者及び障害児の支援、医療、教育、児童の福祉等に関する業務を通じて日常的にケアラーに関わり、又は関わる可能性がある機関をいう。
五 支援団体 地域で組織された団体その他の団体であってケアラー支援を行うものをいう。
(基本理念)
第三条 ケアラー支援は、全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができるように行われなければならない。
2 ケアラー支援は、県、県民、市町村、事業者、関係機関、支援団体等の多様な主体が相互に連携を図りながら、ケアラーを社会全体で支えるように行われなければならない。
3 ケアラー支援は、ケアを受ける者及びその家族等に対する支援と一体的に行われなければならない。
4 ヤングケアラーへの支援は、ヤングケアラーとしての時期が各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培う重要な時期であることに鑑み、適切な教育の機会を確保し、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られるように行われなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 県は、ケアラー支援における市町村の役割の重要性に鑑み、市町村において、ケアラー支援に関する施策が円滑に実施されるよう、助言その他の必要な支援を行うものとする。
3 県は、事業者、関係機関及び支援団体が行うケアラー支援に関する活動が推進されるよう、助言その他の必要な支援を行うものとする。
4 県は、第一項の施策を実施するに当たっては、県民、市町村、事業者、関係機関、支援団体等と相互に連携を図るものとする。
(県民の役割)             
第五条 県民は、基本理念にのっとり、ケアラーが置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、ケアラーが孤立することのないように十分配慮するとともに、県及び市町村が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第六条 事業者は、基本理念にのっとり、ケアラーが置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、その事業活動を行うに当たっては、県及び市町村が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、当該事業所において雇用する従業員がケアラーである可能性があることを認識するとともに、当該従業員がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を尊重しつつ、勤務するに当たっての配慮、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(関係機関の役割)
第七条 関係機関は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施するケアラー支援に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
2 関係機関は、その業務を通じて日常的にケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を尊重しつつ、その健康状態、置かれている生活環境等について確認し、支援の必要性を把握するよう努めるものとする。
3 関係機関は、支援を必要とするケアラーに対し、情報の提供、適切な支援機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(教育機関の役割)
第八条 教育に関する業務を行う関係機関(以下「教育機関」という。)は、その業務を通じて日常的にヤングケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がヤングケアラーであると認められるときは、当該ヤングケアラーの意向を尊重しつつ、その教育の機会の確保の状況、健康状態、置かれている生活環境等について確認し、支援の必要性を把握するよう努めるものとする。
2 教育機関は、支援を必要とするヤングケアラーからの教育及び福祉に関する相談に応じるとともに、当該ヤングケアラーに対し、情報の提供、適切な支援機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(支援団体の役割)
第九条 支援団体は、基本理念にのっとり、適切かつ効果的にケアラー支援を行うとともに、県及び市町村が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
   第二章 基本的施策
(推進計画)
第十条 県は、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下この条において「推進計画」という。)を策定するものとする。
2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 ケアラー支援に関する基本方針
二 ケアラー支援に関する具体的施策
三 前二号に掲げるもののほか、ケアラー支援に関する施策を推進するために必要な事項
3 県は、推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
(広報及び啓発)
第十一条 県は、広報活動及び啓発活動を通じて、ケアラーが、自らの置かれている状況について正しく理解した上で、適切な支援を求めることができるよう必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、広報活動及び啓発活動を通じて、県民、事業者、関係機関、支援団体等が、ケアラーの置かれている状況、ケアラー支援の方法その他のケアラー支援に関する知識を深め、社会全体としてケアラー支援が推進されるよう必要な施策を講ずるものとする。
(相談・交流のための環境整備)
第十二条 県は、ケアラーが社会的に孤立することなく、早期に必要な支援につながるよう、市町村、関係機関及び支援団体との緊密な連携の下、ケアラーが相談しやすい環境及びケアラー同士が交流することのできる環境の整備に努めるものとする。
(人材育成)
第十三条 県は、ケアラー支援の充実を図るため、相談、助言、日常生活の支援等のケアラー支援を担う人材を育成するための研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。
(体制の整備)
第十四条 県は、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、必要な体制及び県、市町村、関係機関、支援団体等の相互間の緊密な連携協力体制の整備に努めるものとする。
(財政上の措置)
第十五条 県は、ケアラー支援に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

   附 則

(施行期日)
この条例は、令和六年四月一日から施行する。

   提 案 説 明
 ケアラー支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現するため、この条例を定めようとする。