ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

鏡島自治会連合会

「鏡島自治会連合会」へ アドバイザー派遣しました

 鏡島自治会連合会は、住民(小学生含む)に地域に関するアンケートを行い、ワークショップ、役員会を重ね10年後を見据えた“鏡島まちづくりビジョン”を令和5年4月策定しました。地域課題や、住民の要望を把握し、活動を進めています。こうした中で、具体的にどんな活動ができるかを皆で勉強する為、令和6年1月21日に“第一回鏡島塾”を開催しました。

「ぎふ地域の絆づくり支援センター」では、「岐阜県地域の課題解決応援事業」により、この勉強会の講師として、東海国立大学機構岐阜大学地域協学センター長・シニア教授益川浩一氏を派遣しました。

主な講演内容

今私たちはどんな社会にいるのか

少子高齢化

●少子化

 近年の合計特殊出生率は1人から1.5人をさまよっている。参加者は自分の兄弟の人数などと比較し、現代の少子化を皆で改めて認識した。※合計特殊出生率:一人の女性が一生の間に生む子どもの数の平均

 合計特殊出生率は1947年に4.54人であったが、1975年には1.91人へと減少し、さらに、2005年には過去最低の水準となる1.26人となり少子化が進んでいる。

●高齢化

 日本の高齢化の特徴は、高齢化が進むスピードが速いことである。日本は1970年から高齢化社会(高齢化率7%)となり、その後20年ほどたった1994年から高齢社会(高齢化率14%)となった。例えばフランスは高齢化社会から高齢社会になるのに110年かかっている。※高齢化率:65歳以上人口がその総人口に占める割合

 日本の高齢化率は、2007年に20%(超高齢社会)となり、2025年に30%、2060年に40%に到達するのではないかと推測されている。

 上記より現代社会はかなりの“少子高齢化社会”であることを再確認した。

<少子高齢化社会の3つの危機>

 少子高齢化の現状を知り、これによって生じる課題と向き合うことが大切である。少子高齢化により以下の3つに対して特に政策的に考えなくてはならない。

1:年金問題 2:健康保険問題 3:労働力人口減少による税収減問題

<逆転の発想で、チャンスに変える>

 上記のような問題点はあるが、発想を変えると、少なくなった子供たちに、知識や経験豊富な高齢者がたくさん関わったり、子供たちの学びや育ちに関わったら、この社会現象は未来に繋がるチャンスになる。

個別化・孤立化

<自殺大国 日本>

 日本では自ら命を絶つ“自殺”が大きな社会問題になっている。1998年以降、14年連続して日本国内の自殺者数が3万人を超える状態が続いた。この要因の1つとして、厳しい経済情勢が背景として考えられる。大手企業も倒産に追い込まれた。

 自殺の理由は様々だが、下記の2つは大きな要因だったと考えられる。

・リストラ、倒産、借金苦など、経済的に追い込まれ、生活を危惧した為

・自分の存在意義、生きがいを喪失した為

 生活を苦に自ら命を絶ってしまった人も多い。だが、経済的理由だけではなく、勤勉な国民性から、仕事が生き甲斐である人も多かった為、仕事と誇りを同時に奪われた状態は自尊心を傷つけ、人格を否定された気持ちになり命を絶った人も多い。

 これは、“生き甲斐”が大切であることの現れである。周りの人から、期待され、あてにされ、気に留められ、自分が大事な存在であることを感じられることが大事なのではないかと話した。

・・・家庭内でも・・・

<児童相談所での話>

 過去に児童相談所勤務経験があり、その際訪れたある女子中学生の話だが、成績もよく、問題を起こすような子ではないのだが、彼女は“援助交際”をしていた。彼女のうちは裕福でお小遣いは月10万円。どうして援助交際をする必要があったのか。

 「お金が欲しくて援助交際しているわけではない。」と話す。彼女は、会う男性が、体目的で近づき、危険な状況になり得ることはわかっている。けれど、「“かわいいね”“きれいだよ”“愛してるよ”と面と向かって言われるのが嬉しくて。次に会う人も、みんな言ってくれる。なんか嬉しくてやめられなかった。」と話す。

 彼女の両親は多忙で、彼女はコンビニやファミレスでご飯を済ませていた。日々の生活の中で“自分は親からさえも大事だと思われていない”と感じていた。

 子どもの尊厳を守る為には、繋がりや絆をつくり、“愛されること”で自分や他人を愛することを学び、“自分は、かけがえのない存在である”と認識できることが大切だと感じるエピソードを紹介した。

<青いおしっこのはなし>

 ある保健所でのエピソード。子育てデビューしたばかりの母親が「赤ちゃんが、いつまでたっても、青いおしっこしないんですよ。病気かなと思って。」と相談に来る。どうやら、TVCMで、吸水力を表すために白い紙おむつに、青い水を垂らすのを見て赤ちゃんは青いおしっこをするものだと信じ込んでいたようだ。

 この家族は最近引っ越してきたばかり。祖父母は遠方に住み、ご主人との仲は良好だが、忙しいご主人を気遣い、母親はなかなか相談できなかった。近所に知り合いもなく、すぐに相談できる相手もいない。

 子育てにおいても孤立化が生じていることを顕著に表すエピソードである。

 地域だけではなく家庭内にも人々の孤立化が進んでいることを伝えた。

人間関係“絆”の重要性

【個別化・孤立化を防ぐためにどうしたらいいか】

 ここまでに話があったように、日本は、課題が多様化し、社会が変化し、不安定・不確実な状態にある。そんな今だからこそ、ソーシャルキャピタルの必要性が高まっている。※ソーシャル・キャピタル=顔の見える距離における、あてにし、あてにされる関係

 ソーシャルキャピタルのとはなにか。わかりやすい例を紹介した。

 医師でもある作家、海堂尊の作品に、『極北クレイマー』という小説がある。その一節に、次のような話がある。“天国と地獄は隣同士。どちらにも御馳走と長い箸が用意されている。地獄の亡者達は自分のことしか考えず自分の口にはいれられない長い箸で食べ物を争って飢える。天国では、長い箸で他人に食べさせあげている。そして自分も食べさせてもらう。”

 長い箸で他人に食べ物を食べさせてあげ、自分は他の人から長い箸で食べ物を口に入れてもらうような、あてにし、あてにされる人間関係・つながり・絆(ソーシャル・キャピタル)が大切だと話した。

 では、どうやってソーシャルキャピタルを蓄えていくのか。このためには、自治会・まちづくり協議会の役割は大きい。「“運”も実力のうち、“縁”も実力のうち」、一緒に祭りや運動会、廃品回収、勉強会をやってみる。そうして、“一緒に何かに取り組んだ”という共同体験、共有体験、成功体験、失敗体験を積み上げる中で、信頼感や安心感が生まれ、自身の中に、また、地域に「ソーシャル・キャピタル」が蓄えられていく。

子ども達、若者たちとのつながり

 現在、子ども達の学習も社会の流れの中で進化している。国語・算数といった教科では収まらない、探究活動、キャリア教育、STEM教育を行う等複雑化している。また、この学習方法も受動型だけではなくフィールドワークを行う等多様化している。教員だけでなく多くの経験を積んだ大人との関りが必要であり、学校は地域、学校、行政、企業などの関りを求めている。※STEM教育​:科学、技術、工学、数学の分野を統合的に学び、将来、科学技術の発展に寄与できる人材を育てることを目的とした教育プランのこと。

 また、いじめや不登校も大きな問題である。早く適切な対応ができるよう地域との“情報共有”を求めている。様々な視点から子供達を見守りたい。

 こういった背景もあり、岐阜市には「学校運営協議会」が設置されている。地域の方からの運営や経営に対する意見の取り入れ、“学校の応援団”になってもらう仕組みを整えている。

 全国的にも、地域と学校が連携・協働する活動が促進されている。

 地域コミュニティと学校の連携により、学力が向上した(東京都三鷹市)、補導件数が激減した(福岡県春日市)という実例もある。

 では、何をやるか。実は、お祭りなど伝統行事に参加を誘致、地域学習に参加、通学の際の見守り、地域清掃等、すでに子供達の為にこの町はもう活動していると思う。まずは、今あるものを活かし、それをさらに深く、発展させ、幅広くやることから始めてほしい。あるもの生かしでやってほしい。

 学校は、地域の皆さんとの関わりを求めている、あてにしている、期待している。また、子どもたちの為の活動は、地域にとっても、地域全体の交流の場や、協力意識が深まり、住みやすい雰囲気が作れる。一人一人の生きがいとなり、まち全体が元気になる。

 ぜひ、地域の皆で、一緒に楽しく、人と繋がり、世代を超え子供達とのつながりにも目を向けてほしいと話した。

当日の様子
当日の様子

 

<外部リンク>