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岐阜市 

「岐阜市」へ アドバイザーを派遣しました

 現在、岐阜市には2,500弱の自治会があり、それぞれ自治会活動を行っているが、加入率の低下、役員の担い手不足、高齢化等共通の課題を多く抱えています。岐阜市は、この状況における、地域コミュニティの重要性に関して改めて考える為、令和5年10月30日に講演会を開催しました。

 「ぎふ地域の絆づくり支援センター」では、「岐阜県地域の課題解決応援事業」により、この講演会に講師として、岐阜協立大学経済学部経済学科准教授菊本舞氏を派遣しました。

 当日は、「人口減少時代の地域づくり」と題して菊本氏に講演いただき、自治会長等150名が参加しました。

主な講演内容

地域社会の変化

 現在、地域社会は、人口減少、高齢化、ライフスタイルの変化によって地域で汗をかく人の絶対数が少なくなり、できることが狭くなっている。しかし一方で、災害、防犯、見守り活動など、いざという時に信頼できるよう地域社会の関係性をつくり、保持し続けることが期待されている。このギャップへの対応が大きな課題である。

(人手不足の現実)

 日本では、2000年代後半から、人口減少が問題視されてきた。さらに、人口減少の局面に立たされた状況で、高齢化が進む。職場での定年延長、また、自営業者、事業主の減少も昼間に地域にいる人が減り、担い手が減る理由の1つである。

新型コロナウイルス感染症の影響

 そうでなくとも、地域の中の住民の関係性は、この数十年間で薄れてきたと感じられるが、新型コロナウイルス感染症の影響はさらに拍車をかけた。主催者側も参加者側も企画することによる感染リスクを考え活動を制限した。この中で、様々な工夫を凝らし地域活動を持続した地域ももちろんあるが、多くの地域では、3年ほど活動を控え、コロナ5類となった今、制限されない状況で以前のように地域活動を再開させようと考えた時、下記のような理由で困難に直面している地域が多いと聞く。

・1~2年で入れ替わる役員が多く地域活動の内容やノウハウを引き継がれていないため、何からはじめたらよいか手順がわからない。

・分散あるいは簡素化して開催されることが増え、形式化・形骸化されやすくなり、意義や必要性が共有されない。

 このような課題に立ち返って、必要性を議論し、現代のやり方に置き換えて頂くのは地域にとってとてもよいことである。しかし、停滞した状態を継続してしまうとより一層希薄化が進行する。

何気ない人とのつながり

 地域活動を行うことによって、挨拶を交わしたり、日常的な井戸端会議をする機会が生まれ、顔見知りが増える。なんとなく、どこに住んでいるどんな人かを知り、いざという時に助け合うことができるかもしれない。

 ”人と人とのつながりは必要なのか”極端なことをいってしまうと、お金を払えば、基本的な日常生活を送ることはできる。行政サービスなどを利用し、生活をすることもできる。しかし、それだけでは満たされないことがあると思う。身近に家族以外にも、信頼できる人がいることによってより安心して暮らせるのではないだろうか。

……菊本氏の経験談……

 これは、高山市の流動性の少ない高齢化が進んだ地域で、学生調査員と生活実態調査をした際のエピソード。住民の家同士は10mほど離れ一人暮らしの住民も多い。近所付き合いも長年続いている地域である。

エピソード1

学生調査員:「一人暮らしの方が多いのでお互いに気にされて暮らしていらっしゃるのですか?」という質問に

地域住民:「毎朝カーテンを開けるとき、何気なく見るの。開いてたら、今日も起きてるなって。」と回答。

エピソード2

この地域では当時、布団の押し売りが多かった。学生調査員​が住民宅の玄関先をうろうろしていると

地域住民:「あんたどこの人?」とお向かいさんから声がかかる。互いを守り合っている。

 このように何気ない形で見守っている地域だからこそ、個人単位で抱える問題が共有化され、安心して暮らせる。現在、孤立社会化が問題視されているが、地域のつながりを大切にすることで、多くの方が孤立、孤独から救われるのではないだろうかと話した。

恩送り

エピソード3(上記高山市での生活実態調査時)

学生調査員:「こんなに何気ない形で皆さんが見守ってくださってるから安心ですね。」と伝えると

地域住民:「でもね。もう年だしね。子供達も戻ってこないし、してもらってばかりでもう返せないから申し訳なくってね。」と返答。

 菊本氏は当時、お互い様、相互扶助というのは“何かあったら、助け合う”という当たり前の人類の精神がと思っていたけれど、してもらう方は、“何かの形で恩返ししなければ”と思う方が多いことを実感するエピソードだったと話した。特に最近、福祉の業界の方から“甘えたり、頼ったりするのが苦手な高齢者の方が多い”と聞く。自分もそうかもしれないと考える。けれど、“お互い様”とは、一つ受け取った優しさを、相手に返すだけでなく、「恩送り」という考え方もあると伝えた。

「恩送り」とは、誰かから受けた恩を直接その人に返すのではなく、別の人に送ること。 感謝するという感情を大切にし、「恩送り」は世代を超え、時代を超えて、受けた恩を手渡していく。冒頭に述べた通り、社会事情の変化、人口構造の変化は著しいが、受け止める必要がある。解決しなければいけない問題も多いが、この「恩送り」の考え方を共有することで仲間となり、地域づくりに取り組んでほしいと話した。

当日の様子
toujituno

 

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