本文
木造能狂言面[もくぞうのうきょうげんめん](春日神社)
木造能狂言面附木造古楽面[もくぞうのうきょうげんめんつけたりもくぞうこがくめん]
分類 | 重要文化財 |
---|---|
指定別 | 国 |
所在地 | 関市南春日町 |
所有者 | 春日神社 |
指定年月日 | 平成22年6月29日 |
上:乙
下:若い女
当社所有の能・狂言面のほとんどは桃山時代以前に遡り、こうして古作の面が多く伝わることは極めて珍しい。
面の種類は、翁、尉、男、女、鬼神、怨霊など、典型的なものが一通り揃うが、形状は定型化されておらず、また各面の名称の特定も難しい。これは、能・狂言面が形式化される以前の多様な表現が混在する状況を示しているものと考えられ、創作時代の面影が見られるものである。
また、作者名を記しているものがほとんどない中、能面を製作する面打師の動向を知る上で重要な資料が含まれる。たとえば、能面の中には、「紀太新次郎」の刻銘がある面があるが、彼は室町時代の面打師とみられる。他に作例は知られないものの、観世元章が同人の面を所蔵していたとの伝えがある。その面は、薄手につくる巧みな彫技で、かなり優れた作家であったと想像される。
美濃は古くから猿楽が盛んであったが、なかでも宝生座が美濃に赴いて能を演じていたことはよく知られている。本能面中の銘文にも宝生大夫の極があり、春日大社との関係からも当社の能楽が大和猿楽系であったことは明らかで、本能面製作の背景や大和猿楽における能面形成を考える上でも大変貴重である。
附とする古楽面8面は、当社の猿楽とは別種の行事で用いられたものとみられるが、いずれも江戸時代以前の貴重な面である。
※観世元章(かんぜもとあきら)(1722〜1774)
江戸中期の能役者で、シテ方観世流の15世観世大夫。将軍徳川家重・家治2代の能指南役となった。
※極(きわめ)
「極」は書画、刀剣、小道具などの作者・品質・伝来を見極めること。
※大和猿楽
大和国を拠点とし、興福寺などの寺社に神事祭礼奉仕の義務を負った猿楽の座。