鳥獣害について
鳥獣害とは
 単純に定義するならば、「野生生物が農作物に損害を与えること」である。
 しかし、実際は加害鳥獣の種類が多く、その加害方法や被害状況は多岐に渡っている。加害鳥獣の代表的なものとしては、イノシシ、シカ、サル、ヌートリア、ハクビシン、アライグマ、タヌキなどの大型ほ乳類、モグラ、ノネズミ類などの小型ほ乳類、カラス、ハト、スズメなどの鳥類がある。
 被害の形態の多くは食害であるが、踏み込みなどによる倒伏や逆に持ち上げによる根上がりなどもある。
 なお、ほ乳類と鳥類以外の動物による被害は「鳥獣害」には含まれない。
被害の形態 その1 食害
 上述のように被害の中心は食害である。しかし、一概に食害と言っても多岐に渡っている。そのため、幾つかのグループに分ける。
 1) は種後の種を食べる(ハトなど)、発芽後の苗を摘む(カラスなど)
 2) 生育期の植物の葉を食べる(シカ、ヌートリアなど)
 3) 未熟な果実を食べる(イノシシなど)
 4) 熟す直前の果実を食べる(多くのほ乳類、大型の鳥類)
 5) 熟した穀物を食べる(スズメなど)
 さらに細かく分類可能であるが、食害の概要として概ねこの5分類に分けられる。
 中には想定外の被害もあり、例えば、トウガラシなども葉は辛くないため、シカなどに食べられることがある。
被害の形態 その2 その他の被害
 食害以外にも様々な被害がある。
 1) 大型ほ乳類がほ場内を歩き回り、作物を押し倒す。サギ類が虫を食べるためほ場内に舞い降り、押し倒す
 2) イノシシが草の根、ミミズ、イモ類を食べるため、ほ場内の土を掘り返す。
 3) イノシシが樹上の果実を食べるため、樹を倒したり、のし掛かって枝を折る。
 4) モグラ、ノネズミ類がトンネルを造る際に株を持ち上げ、根を切ったり、根上がりになったり、倒伏させたりする。
 他にも様々な形態の被害があるが、あまり意味がないので、ここまでとする。
鳥獣害対策
 鳥獣害対策に確実な対策は少ない。一つには費用が掛かり、費用対効果の面から困難な場合もある。さらに鳥獣の方が対策に対して慣れたり、回避方法を見つけて無効にしてしまうからである。
 鳥類については鳥よけの網を張るのが基本である。概ねこれで被害は防げる。バルーンや光り物などの鳥よけは1〜2週間で鳥が慣れるため、数種のものを用意して、時々取り替える必要がある。
 大型ほ乳類には電気木柵(電柵)が一般的である。特にイノシシには上手に仕掛けると極めて有効で、水稲の被害の中心がイノシシであることから、広く普及している。しかし、シカやサルにはそれほど有効ではなく、シカに対しては柵の高さを上げる(2m以上)と有効であるが、サルはたいていの方法は対応策を編み出すので、網などで完全に囲う方法か上部がたわむ構造の高い柵ぐらいしか有効ではない。ヌートリア、ハクビシン、アライグマなどは有効な対策はあまり開発されていない。
 小型ほ乳類、特にモグラ類には捕獲機を含む色々な対策製品や忌避剤が出されており、また、様々な民間対策法もあるが、基本的にはほ場内に進入される前にこれらを導入し、進入を忌避させる方法が有効である。
 狩猟・捕獲には免許が必要であり、猟期、猟区を除く時期、場所では行うことができない。有害鳥獣の駆除には市町村からの申請が必要である。
なぜ被害が増えたのか
 鳥獣害は年々増加傾向にある。最近目立つようになったのはシカとサルの被害である。
 被害増加の原因は、野生動物、特にシカとサルの生息数が増えたことが考えられる。具体的な生息数調査等はなされていないが、目撃数や高山帯での食痕の確認などの状況証拠があげられる。他方、植林地で間伐がなされない(下草がなくなり、餌がなくなる)ことが生息地を狭め、結果的に生育域を外側に押し広げ、現状に至ったと言う意見もある。
 また、人を恐れなくなったことも大きい。狩猟による淘汰圧が減ったこと、畑の残渣や観光客による(結果的な)餌付けなど、種類によって異なるが、人と野生動物との距離が近くなっている。
 耕作放棄地の拡大もその要因と言われている。隠れる場所が増えたことがその理由であるが、もうひとつ、「人の臭い」がなくなったこともあると思われる。実際、ウシやヤギなどを放牧すると動物が近づかなくなる例が報告されている。

西濃地域における具体的な獣害例
西濃地域で見られる具体的な獣害例を以下に挙げる。
イノシシ
 体が大きく、土を掘り返す性質があるため、獣害被害としては一番多い。
 水田では走り回って生育中の稲を倒すほか、「ヌタ場」として転げ回ることもある。畑ではミミズや昆虫を食べるため鼻で土を掘り返したり、イモ類などを食べることもある。果樹では摘果された果実を食べるほか、樹に成っている果実まで食べるが、被害はそのときに枝を折ることが中心である。
 防除方法としては、ほ場を囲うことで、波板や網の他、電柵が効果ある。

 ※ヌタ場:体に着いた寄生虫などを退治するため、転げ回っる湿った場所。谷間の窪地や沼のほとりなど、水分が多く、土が軟らかいところが選ばれる。
シカ
 最近、西濃地域で一番被害が増加している。
 何でも食べる上、ジャンプ力が高いので通常の柵では効果がなく、難防除害獣のひとつである。
 上から若い芽や葉を摘むように食べるので、水稲や麦のように穂が上に付くタイプの作目では、かなりの被害が出ることがある。変わった例としてはトウガラシなどでも葉は辛くないので、被害を受けることがある。また、南天のような果実も食べる例がある。
 防除方法は柵を高く(2m以上)する、着地側(多くはほ場側)を不安定な形にする、などがある。
サル
 西濃地域でも少しずつ被害が増えている。頭が良く、防除対策をしてもなんらかの回避策を見つけるため、最難防除害獣である。
 被害は多くは果菜類や果樹、トウモロコシと幅広い。水稲なども穂をちぎって食べるという。
 防除方法としては天井を含めて囲うのが一番。柵の上部を外に弛むようにした「猿落君」というシステムもあるが、柵そのものを跳び越える場所(例えば電柱など)が一つでもあると効果がない。
ヌートリア
 西濃地域で見られる害獣。毛皮養殖で国内に逃げ出したものが定着したもの。
 生息地が沼地のため、水路などを住処にしている。そのため、被害は水稲が主で、冬には小麦も食害される。どちらも大きくなると被害は少なくなるが、食害の他、水稲苗を踏み荒らす害もある。
 防除はワナで捕獲するのが一般的。
ハクビシン・アライグマ
 どちらも大きな被害は知られていないが、農家ではこの両者を十分区別できていない。
 被害の多くはウリ類や果樹などの果実類の食害。特にハクビシンは木登りが得意なので、やられると結構な被害になる。
 防除はワナぐらいしかないが、よほどのことがない限り対策は取られていない。
モグラ、ネズミ類
 モグラはトンネルを掘り、水田の水を抜いてしまうほか、作物を押し上げて根を切ったりして枯らすのが被害の中心である。
 モグラ退治には様々な道具や工夫があるが、家庭菜園などでは難防除害獣となっている。
 ノネズミ類(カヤネズミ等のハツカネズミ大の小型のネズミ)はモグラが空けたトンネルを利用し、時には拡大したりする。いちごの種を食べるなどの小さな被害を出す程度。時にクマネズミやドブネズミのような大型ネズミもトンネル利用で被害を与えるが、この場合はダイコンの首をかじったり、いちごの果実の先の方半分を食べるなどの形が多い。
 基本はほ場内にモグラを進入させないように、防除器具を最初から付けておくことが重要である。
ハト、カラス
 播種直後から生育初期まで被害を与える。ただし、両者では被害の形態は異なる。
 ハトは播種直後の種を食べる。したがって、対処方法として種に忌避剤を塗布するのが一般的である。
 カラスは種そのものを食べるより、土を掘り返してミミズや昆虫などを食べているようである。また、スイカなどのウリ類は熟す過程で食害がある。対処方法は防鳥用のネットを掛けるか、高さ15〜20cmにひもを張るのが有効とされている。ただし、一度進入を許してしまうと、その後の対策は効果がないことが多い。
 両者とも「目玉模様」や「光る物」を忌避すると言われているが、2〜3週間で慣れてしまう。
ムクドリ
 ムクドリやこれに類する中〜小型の鳥類の総称。
 秋に熟しかけた果実を食害する。
 防鳥用ネットを張るのが一般的な対応策である。
スズメ
 出穂後しばらくして、未熟の水稲の籾をしごいて糊状のデンプンを食べる。葉菜類などの小さな種も食べることがある。
 一般に光るテープや防鳥用ネットを使用して対処する。こちらも進入後の対策は効果がないことが多い。
サギ類
 水田地帯で見かけるサギ類はシラサギ類(3種いる。通常はコサギ)、アオサギ、ゴイサギが知られているが、被害は主にシラサギ類である。
 食害など直接の被害はないが、水田内の水生動物や昆虫を食べに降りてきて、成長した稲を踏み倒すことで被害が出る。特にイチモンジセセリの発生期が出穂後になるため、問題になる。
 また、サギ類の糞の中にセルカリアという寄生虫の卵があり、素足で水田にはいると誤って寄生され、湿疹やかゆみが出、1か月程度続く。
その他(県内の被害例)
 幸運にもクマによる被害はないが、春先や秋に出現することがある。(岐阜県内では被害がある)
 同様にカモシカによる被害例が県内山地では知られている。

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