耕作放棄地について
耕作放棄地(遊休農地)とは
 「耕作放棄地」や「遊休農地」と呼ばれるほ場は、若干の定義の差はありますが、「現在耕作がされておらず、今後もその予定がない田畑」を言います。
 一括して「耕作放棄地」と言っても、その状態には大きな差違があり、「耕作はされていないものの毎年草刈り等の管理がなされ、いつでも田畑に戻せるもの」から、「数年以上放置され、灌木等が生えたり、時には植林されたりして、田畑に戻すのは極めて困難な状態」のものまであります。
 また、地域別に見ても、中山間地域だけではなく、大都市周辺でも見られるます。
 しかし、発生要因も中山間地域と都市周辺では若干状況が異なり、共通する要因とその地域特有の要因が見られます。
耕作放棄地が発生する要因(共通)
 「耕作放棄地」が発生するのは一義的には耕作をする人がいないためですが、なぜいないかと言えば、「土地生産性」が低いと言うことに尽きると思われます。(要は投資してもそれだけ儲からないと言うこと)
 大規模に耕作できる「水稲」を例にすると、10a当たり7〜10俵ほど収穫できます。現在1俵が1.5〜1.8万円ほどですから、10a当たり20万円弱の収入しかありません。1haでも200万円弱です。10aあれば小さな店(喫茶店やコンビニなど)が経営できますし、1haであれば小さな工場やスーパーマーケットが作れます。売り上げを考えるとその生産性の差は明らかです。
 農地は「農地法」で守られているので「農地」として残っていますが、それだけで土地生産性が向上するわけではないので、必然的に新規の投資者(新規就農者)は少なくなります。必然的に現在の耕作者の平均年齢は高齢化し、体力的、経済的に維持、拡大が困難になり、規模縮小、耕作放棄と繋がってきます。
 また、農業はある程度の経験が必要です。このことも新規に始めるための障害になっています。
中山間地帯における要因
 中山間地帯は土地生産性がさらに低くなります。これは機械を効率的に利用できないことから起こります。
 機械の利用効率は平坦な大規模区画のほ場では高くなりますが、区画が小さく段差などがあれば、ほ場の出入りのための移動に時間が掛かるため、利用効率が大きく下がってきます。
 特に谷沿いなどの傾斜地では大型機械が入らない地域もあり、さらに機械効率が下がります。
 このため、ますます担い手は育ちにくく、経営面で担えない地域が出ています。
 加えて中山間地帯に特有の要因としては「獣害」が上げられます。イノシシ、シカ、サル等による獣害は、防護施設等の設置によるコスト上昇に加え、生産者の栽培意欲の低下をもたらし、ひいては耕作放棄に繋がっています。
都市部における要因
 では、平坦地では土地生産性は維持されているのでしょうか。
 実際には維持できているとは言えません。区画が1ha以上あるような地域でも、1区画を複数の所有者が所有している場合が普通です。担い手との受委託は所有者との個人契約のため、1区画を全面的に受託できるケースは少なく、1区画を細分し、その一部を受託する形が通常です。この場合、受託ほ場は分散しており、経営面積の割に効率が高くなっているわけではありません。
 集落営農型の営農組合の場合は集落全体の合意で成立していますから、こうしたケースは少なくなります。そのため行政は集落営農型を推進しています。
 しかし、受委託は所有者との契約行為であることから、不在地主の問題が出てきました。不在地主とは農地がある地域に居住していない所有者です。例えば、都会の企業に就職し、生活基盤が都会にある会社員は相続で田舎の農地を取得した場合などがそうです。こうした場合、所有している農地の位置すら把握していないケースがあります。当然、耕作はされません。営農組合側も不在地主の住所を把握する方法がないため、受委託を働きかけることもできません。
 少し前には都市化による農地の蚕食が問題になりました。市街化区域に指定されている区域では宅地転用が容易のため、大区画の農地でも所有者単位で転用され、小区画化していき機械効率が下がりました。また、宅地横の農地は境界がコンクリートになっているため、様々な作業障害が生じています。
 最近問題化しているのが、大規模開発です。農地転用には市町村の農業委員会や県(場合によっては農林水産大臣)の許可が必要ですが、逆に開発許可が下りれば転用可能です。問題なのは大規模開発が可能な場所は、元々広い農地がまとまっている「優良農地」地域に限られることです。つまり、担い手等が受委託するのに有利な地域が転用されるのです。
 このことは、優良農地の農地所有者人に動揺を与えました。以前は優良農地は転用が困難のため、担い手等に委託しても耕作を続ける必要がありましたが、転用の可能性が出ると転用を期待して委託に出さず、かつ自分でも耕作しない農地が増えてきたのです。
 このようなことから、比較的生産性が高い平坦地でも耕作放棄地が増加しています。
耕作放棄地対策は
 多くの地域で実施されているのが集落営農型の営農組合または機械利用組合の結成です。
 集落型では集落構成員の大多数が参画しているため、農地の分散が少なく、作業効率が高くなります。また、オペレーターなども後継者を確保しやすいと考えられています。
 他方、集落外との出入り作が多い地域や、集落内のまとまりが少ない地域では地域集団を作ることすら難しい地域もあります。
 また、根本的な土地生産性の低下に対しては、小麦や大豆に変わる生産性の高い野菜類(と言っても10a当たり30〜40万円程度の収入)の作付けを推進し、一部では定着しつつあります。
 これらを加味しても、営農組合の経営は安定しているとは言い難く、公的機関からの補填は必須の状況です。
 したがって、耕作放棄地の解消はきわめて困難な現状です。

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