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志野[しの]県指定

分類 重要無形文化財
指定別
保持者

若尾利貞(多治見市)
林正太郎(土岐市)

指定年月日 平成15年2月28日(若尾利貞)
平成24年3月16日(林正太郎)
写真 若尾作若尾利貞氏
若尾利貞氏鼠志野茶碗(若尾利貞作)
林正太郎氏林作
林正太郎氏赤志野茶碗(林正太郎作)

 志野は、黄瀬戸、瀬戸黒、織部とともに岐阜県東濃地方一帯の伝統的な陶芸であり、美濃の桃山茶陶を代表するやきものである。16世紀末から17世紀初頭にかけて、畿内における茶の湯の隆盛を契機として、可児市から土岐市に至る地域において、大窯で焼成された。
志野の製品には、茶陶と白磁・中国陶磁(白磁・青花)写しの皿や無地の碗・小碗などの量産品とがある。茶陶では、茶碗や水指、花入、香合、香炉、向付、水注など、茶の湯に用いられるほとんどの器種が生産された。茶陶の志野は、技法によって無地志野、絵志野、紅志野、赤志野、鼠志野、練り上げ志野に分けられる。
志野の制作には、胎土に岐阜県東濃地方特産の百草土、釉薬には風化した長石を主体としたものを用いる。この技法により制作された陶器は、柔らかで落ち着いた光沢を持つ白色の肌地と柚子肌のような独特の肌合い、随所にほんのりと現れる緋色、水墨画にも似た絵付け等に特徴が見られる。その意匠は装飾性に富み、鬼板と呼ばれる酸化鉄の泥漿による下絵付けには、動植物などの具象的な文様に、桧垣、亀甲、篭目などのパターン化した文様を組み合わせた多種多様な図案が描かれる。また、器形は四方形や扇形など正円を離れた形も採用し、茶碗ではへら削りや面取りを多用した動的な器形を呈するものが見られる。
桃山時代には優れた茶陶が数多く生み出されたが、江戸時代になると衰退した。その制作技法は長らく途絶えていたが、昭和5年(1930)に故荒川豊蔵氏の古窯跡発見を機に復興が始まった。現在では、桃山時代の伝統的技法を受け継ぎつつも独自の作風を工夫して、より芸術性の高い、機能美にあふれた作品を追求しようとする試みがなされている。
この技法の保持者として、若尾利貞氏(多治見市)、林正太郎氏(土岐市)を認定する。

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